研究課題/領域番号 |
21K13027
|
研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
板垣 浩正 常磐大学, 総合政策学部, 助教 (30845251)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 連結的知覚動詞構文 / 主体性 / 認知言語学 / 新奇表現 / 創造性 / 拡張 / 主体化 |
研究実績の概要 |
John looks happy (to me).とった知覚表現は、括弧内に記された知覚経験者が文に現れなくとも、その存在が自ずと解釈されると言われている。一方で、この存在の解釈に関する分布や動機付けなどは明らかになっていない。本研究は、言語表面上には現れないものの解釈される存在を認知言語学の理論を援用して解明することを目的としている。 本年度は英語の知覚表現の中でも、味覚・嗅覚・触覚の感覚器官に依拠する現象の文法的振舞いや通時的な構文変化を分析した。この結果、これらの表現は共通して総称的存在として解釈される傾向にあることが分かった。特に、味覚表現については中間構文の成立過程に類似する通時的な変化を辿っており、視覚表現などと文法的な振舞いにも差が見られることが明らかになった。 上記の成果に合わせて、知覚表現に形式的・意味的に類似する新奇的な表現の収集と分析も進めている。具体的には、形容詞補語を伴う行為動詞を用いた表現を英語コーパス(BNC, COCA, NOW Corpus)だけでなく、ウェブ上で観察される事例を含めて幅広く収集し、当該表現の拡がりを知覚表現と関連付けて検討している。このような表現は、話者の体験に基づく評価的な判断が含まれており、それ故に明示されない主体が主に話者として解釈されることも分かった。さらに、実際に観察される新奇表現は、触覚や味覚といった感覚器官を想起させる行為動詞によって成立しており、知覚表現に動機づけられていることが示唆される。今後さらなる観察を進め、次年度内に論文として成果を報告する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していた知覚表現の多様な用法や、類似する新奇的な表現の記述からいくらか成果が得られており、おおむね順調に進んでいると考えられる。 当該年度に投稿した論文も採択されており、次年度内に公開予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで、知覚表現を各感覚器官に分けて個別に収集分析を進めてきた。その一方で俯瞰的に見てみると、知覚表現で読み込まれる明示されない主体が、必ずしも一様の解釈で行われているわけではなく、文脈や各感覚器官、そして構文によってさまざまに変容していることも分かってきている。今後は、全体像としての見通しを立てていく必要がある。 また、認知言語学では、話者の役割を積極的に取り込む「主体性」を強く推し進めているが、本研究の現段階における推察として、この「主体性」には複数のメカニズムが関与している可能性が考えられる。今後、理論的精緻化を提案することも検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外出張の旅費に充てる予定だったのだが、新型コロナウィルスの影響により学会および関連する打ち合わせが全てオンラインで実施されることになった。 次年度は施設設備の拡充や海外出張、論文等の校正チェックに使用する予定である。
|