研究課題/領域番号 |
21K13031
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
矢冨 弘 熊本学園大学, 外国語学部, 講師 (50867843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英語史 / 社会言語学 / 文献学 / コーパス |
研究実績の概要 |
2022年度は研究課題の2年目として、文献学的分析、社会言語学の理論構築、統計学の3つの点に集中して研究を進め、成果を学会発表と論文の出版という形で発表した。 個人言語(idiolect)のデータソースとして、初期近代期の出版された説教集が妥当であるかの検討を、これまでよりもより詳細に、そして網羅的に行った。出版物が個人言語のソースとして妥当かどうかについては、現存する写本との比較や、同一作家の多ジャンルにわたる文献の比較、そして説教文の中でも時代や聴衆のタイプによって個人言語に差異が観察できるかどうかといった複合的視点が必要である。このように多面的な分析を行い、その一部を近代英語協会第39回大会で発表した。さらに、より網羅的な分析に基づいた議論を2023年7月に英国シェフィールドで開催される国際学会(22nd International Conference on English Historical Linguistics)で発表予定である。また、この研究の一部は2022年12月に出版された論文にも反映されている。 社会言語学の近年の研究動向を網羅的に把握したうえで、本研究の位置付けを改めて確認した。これは本研究においてデータを提示してその言語使用の社会的意味(social meaning)のあり方や意義について議論する際に必須の項目である。研究結果は英語史フェス2023にて発表した。 本研究では個人の言語使用と複数の言語変数の使用を関連させて議論するため、統計的手法を効果的に利用する必要性がある。本年度は統計の基礎的な部分や言語学で用いられている統計的分析手法に関して調査を行った。依然として自分のデータに適合する統計的手法の確立と実際の使用には至っていないが、様々な手法を確認したことで今後の手法に関する展望が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルス感染拡大の影響で学会発表の機会が制限されてしまった。さらに、同様にコロナウィルス感染拡大に関連して、当初想定していなかった業務が発生したことにより十分な研究時間を確保できなかったことから、研究の進行はやや遅れている。2022年度には、2件の学会発表を行い、1件の論文が出版された。現在も複数の論文を同時並行で執筆中であり、まもなく提出予定である。研究の基盤となる部分の分析や議論は進んでいるが、研究成果の公表に遅れている部分があるため、次年度はこれらの点を踏まえ、研究成果の公表に精力的に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究により、データ分析や議論に必要不可欠な研究基盤を固めることができた。最終年度となる次年度には、これらの基盤をもとに、データを用いて社会言語学の理論に沿った説得力のある議論ができるように発展させる。そしてその成果を国内外の学会で研究発表という形で発表し、議論を深める。さらに現在執筆中の複数の論文をジャーナルに提出して研究成果の公表を目指すとともに、これまでの研究成果をまとめ、本研究の最終目標である単著の執筆と出版に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大によって、当初発表を予定していた海外の学会が開催されなかった。そのため旅費を使用しなかったため、次年度の学会参加の旅費に充当することとした。
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