研究課題/領域番号 |
21K13036
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
西坂 祥平 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80870302)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 第二言語習得 / テンス・アスペクト / 母語の影響 / 多言語比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二言語としての日本語のアスペクト習得、特に「結果の状態」を表す「ている」の習得に焦点を当て、学習者の母語による事態把握が与える影響の解明を目指している。日本語のアスペクト習得研究においては、「ている」の基本的な用法である「動作の持続」と「結果の状態」のうち、習得難易度が高いのは後者であることが知られている。しかし、日本語のアスペクト習得研究をレビューした菅谷(2016)が指摘するように、日本語において「結果の状態」とされる表現でも、学習者の母語で対応する表現によって難易度が異なることを示す研究もある。そこで本研究では、「移動動詞+ている」「状態変化動詞+ている」に注目して動詞の意味特性による「ている」習得の難易度差を検証する。具体的には、「結果の状態」の「ている」を「変化」と「状態/存在」を同時に言語化する表現とする稲垣(2013)の分析に基づき、日本語学習者のL1およびL2データを比較する。まず、異なる言語を母語に持つ話者が同一事態のどの部分に注目してどのように言語化するか、L1を対象に産出調査を行う。そして、その結果をL2習得における母語の影響を検証するベースラインとして、L2習得データと比較する。本研究では、筆者がこれまでに行ってきた中国語母語話者による日本語アスペクト習得の知見をベースとして、ほかの言語を母語に持つ日本語学習者の結果と比較することで、日本語のアスペクト習得における母語の影響を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目である2021年度は、本来であれば海外の教育機関でL1調査を実施予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で現地に赴くことが困難であり、調査が実施できなかった。以上のことから、現在のプロジェクトの進捗状況は遅れていると判断した。しかし、主に事態把握や類型論の観点から理論的枠組みの整理を行ったほか、予備調査として実施済みであった中国語母語話者の日本語習得データの分析を進め、学会での発表1件、招待講演1件を行った。その後、学会誌への論文の投稿を行い、条件採用の判定であった。現在は修正稿の審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる本年度は、予備調査の結果を踏まえ、改善したタスクを用いたL1およびL2調査を実施する予定である。調査においては元々は調査紙を配布して回答を記入する形式を予定していたが、昨今の社会情勢を鑑みて、オンライン調査にシフトする可能性もある。その場合、オンラインで調査が可能となる実験環境を整備する必要がある。タスクの改善を図るとともに、調査実施方法についても検討し、夏から秋にかけて調査を実施したいと考えている。その後、結果の分析を行い、学会発表と論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2度の海外調査のため渡航費を計上していたが、新型コロナウイルスの影響によりいずれの渡航も叶わなかった。そのため渡航費および調査にかかる経費を使用することができなかった。よって今年度、改めて海外調査を行うための渡航費として使用したい。
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