研究課題/領域番号 |
21K13049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤井 聡美 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 研究員 (60866268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | コミュニケーションを取ろうとする意欲(WTC) / 外国語学習経験 / 成功体験 / 失敗体験 / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語授業内における学習者の「コミュニケーションを取ろうとする意欲」(Willingness to Communicate: WTC)に焦点を当て、コミュニケーション意欲の向上に必要な要因を過去・現在・未来の時間軸から検討することである。初年度となる令和3年度は、学習者の過去に着目し、コミュニケーションを取ろうとする意欲(WTC)と過去のコミュニケーションにおける成功体験・失敗体験との関係性を探った。 大学生英語学習者(N=109)を対象にWTC Scale (Peng & Woodrow, 2010)に答えてもらい、WTCの程度を測り、過去のコミュニケーションにおける成功体験と失敗体験について自由記述で回答を収集した。WTCが比較的高い学習者(N=58)と低い学習者(N=51)とに分け、双方の成功体験と失敗体験との違いをKH Coder 3というテキストマイニングソフトウェアを用いて分析し、考察を行った。 結果として、WTCの高い学習者ほど、過去の英語コミュニケーションにおける成功体験についての記述量が多く、肯定的な表現の頻度もWTCの低い学習者より多くみられた。一方で、失敗体験に関する記述はWTCの低い学習者に多くみられ、二つの群の結果が鮮明となった。 学習者の成功体験の内容としては、教室内外で行う実際的なコミュニケーションに関するものが最も多く、英語母語話者との会話も自信につながっていた。失敗体験は自身の英語力不足や語彙の少なさによるものが確認され、WTCの低下にもつながる要因であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、学習者のコミュニケーションを取ろうとする意欲(WTC)と過去のコミュニケーションにおける成功体験・失敗体験との関わりを明らかにすることを目的として、研究活動を行った。関連する先行研究を幅広く集め、本研究の方向性や研究意義の再確認を行った。また、当初の予定通り、必要となる自由記述質問紙による回答データを大学生英語学習者から収集し、分析を進めた。 研究成果については、2021年8月28日、大学英語教育学会(JACET)国際大会において、"Willingness to Communicate and Experiences of Successful and Unsuccessful Communication in English: The Case of Japanese EFL Learners"と題して口頭発表を行った。この機会を通して本年度の研究内容を総括し、内容を深めることが出来たと同時に、発表時には有益なコメントやフィードバックを得ることが出来た。しかし、現段階では上記の成果を論文として発表をすることが出来ていない状況であるので、その点が課題点である。以上の状況を勘案して、「おおむね順調に進展している」という自己評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度にまとめた研究結果について、論文として発表することを目指すことに加え、次は学習者の未来に着目し、コミュニケーションを取ろうとする意欲(WTC)と未来に向けた目標設定との関係性について研究を進める。前年度とは異なる大学生英語学習者を対象に、同じくWTC Scale (Peng & Woodrow, 2010)に答えてもらい、WTCの程度を図り、英語学習における目標について自由記述で回答を収集する。WTCが比較的高い学習者と低い学習者とに分け、双方の未来に向けた目標の可否、目標の内容の違いを検証する。 2022年8月5~7日に開催される、20th AsiaTEFL - 68th TEFLIN - 5th iNELTAL 2022 Indonesia International Conference(アジア国際合同学会)にて、口頭発表することが決定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、遠方で開催される学会参加のために計上していた旅費がかからなかったため。次年度は感染拡大状況を勘案しながら、オンライン学会などへの参加費用などに使用する予定である。
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