研究実績の概要 |
2021年度は,単音レベルの音程知覚テストと2字漢字語レベルの声調知覚・産出実験のための刺激語を選定し,実験計画をたてた。また,中国語を第2外国語として学ぶ日本人学習者の文法能力を測定するためのテストを開発した。このテストを,入門から初中級レベルに相当する日本人中国語学習者154名に実施した。この結果は,『ことばの科学』(張セイイ・玉岡賀津雄,2021,35, 51-68)に掲載した。この論文では,この文法能カテストの弁別力が高く,実用性があることを示した。加えて,入門レベルの学習者を中心に,総合能力を測定するテストも開発した(Tamaoka & Zhang,2022)。さらに,日本人中国語学習者149名と中国人母語話者38名を対象に,日中の母語話者の時間詞の位置の適切性および日本人中国語学習者の時間詞の位置選択について3つの実験を行った。そして,日本人は,場所の句の後に時間詞もってきても許容できるが,中国人はこの位置を容認しないことが分かった。さらに,日本人中国語学習者を中国語能力で上位・中位・下位群に分けて時間詞の位置を考察した。その結果,下位群は日本語母語話者のような時間詞の位置を好むが,上位群になると中国語母語話者のような時間詞の位置を好むようになることが示された。つまり,中国語能力が向上すると共に,中国語母語話者の時間詞の位置の好みへの変化していくことが観察された。この研究成果は,Frontiers in Psychology(Tamaoka & Zhang, 2022, 12, 1-13)の国際学術誌に掲載した。
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