研究課題/領域番号 |
21K13060
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高波 幸代 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (00897407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スペリング習得 / スペリングテスト / テスト形式 / 語彙 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スペリングテストの難易度に影響を与える要因を明らかにし、日本人英語学習者のスペリング能力を適切に測定するテスト作成を通して、学習者のスペリング能力を向上させるための効果的な指導方法を提案することである。 2021年度は当初の計画通り文献研究を中心に行い、予備調査および本調査に向けた準備を整えた。語彙習得においては語形と意味の理解、そして語形と意味を結びつけることが重要とされているが、スペリングの知識は「語形」における「文字」の知識とかかわる。これは読み書き能力における基礎的な要素であり、文字による情報伝達を円滑に進めるうえでも重要である。 学習者のスペリング能力を診断的に評価しようとする試みは古くから行われており、(a)スペリング能力はテスト形式の影響を強く受ける、(b)スペリング能力はスペリングテスト以外では測定できない、(c)スペリング能力を育成することは読み書き能力の向上に繋がる、と指摘されてきた。しかし、スペリング能力およびスペリングテストに関する研究の多くは英語母語話者(L1)対象であり、外国語として英語を学ぶ日本人英語学習者を対象とした研究はきわめて数が少ない。 日本人英語学習者は「綴りの識別」はできるが、「綴りを書く」能力に問題を抱えている。その原因が、テスト形式、語彙の特徴、熟達度、学習背景、のどこにあるかを検証することにより、学習者の実態を明らかにし、スペリングテストの実施方法やスペリング習得を促すための指導法などを提案できると考え、研究を実施している。 これまでの文献研究、調査、および再分析の結果から日本人英語学習者のスペリング能力の測定に適すると思われるテスト形式が明らかとなった。加えてテストに含めるべき語彙の特徴の一部が明らかとなった。これらの成果を国内の学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外のスペリングテストや語彙テストを参照し、これまでの研究成果と照らし合わせながら、調査に使用するためのテスト形式やテストに含めるべき語彙の特徴を明らかにしようと試みている。現時点での成果は論文にまとめ、査読付の学会誌に投稿中である。 本研究で必要となるマテリアルには、スペリングテスト(再生・再認)、語彙テスト、熟達度テスト、質問紙が含まれる。予備調査および本調査で使用するテストと質問紙の選定・試作を行い、予備調査の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は予備調査、本調査を実施する。2022年度は予備調査を中心に扱う。予備調査[1]では、複数のスペリングテスト(再生課題・再認課題を含む)を実施し、調査で使用するテスト形式と、テスト項目に含める語彙を決定する。予備調査[2]では、学習者の学習歴や学習観、学習方略、学習動機を探るために、既存の質問紙を参考に質問紙調査および自由記述による調査を行い、適切な質問項目を抽出する。 本研究ではオンラインによる調査が必要となる可能性も踏まえ、当初から対面での調査方法とオンラインによる調査方法を同時に検討しているが、今後の状況に合わせて適切な方法を選択できるよう引き続き準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍等は予定通り入手することができたが、初年度に多くの経費を必要とする予定であったデジタル機器および統計ソフトの購入に大幅な変更が生じた。これは、Windows11への移行に伴い、分析に必要なPCや統計ソフト(SPSS)の対応状況を確認する必要があったためである。加えて、新型コロナウイルス感染拡大のためオンライン学会が主となり、出張費として予定した分の支出が発生しなかったため、使用額に変更が生じた。 今後、状況を見ながら研究・分析に必要なデジタル機器の購入および統計ソフトの購入を進める。
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