研究課題/領域番号 |
21K13067
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
白土 厚子 東京学芸大学, 国際教育センター, 特命准教授 (90782748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 初等英語教育 / プロジェクト重視の指導 / 指導と評価の一体化 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、まずすでに協力の合意を得ている実践校で再度説明し協力を確認するとともに、プロジェクト重視の指導について理解を得た。 次に,5・6年生の外国語科7社14冊全ての検定教科書の言語材料と学習内容を比較し分析を行った。特に、各検定教科書の特徴や言語活動の組み入れ方とそのための単元構成について詳しく調べ、どのようにプロジェクト重視の指導を活用すると児童の言語活動をより豊かにすることができるのか、その方策を検討した。 これらの研究成果は、令和3年10月の小学校英語教育学会関東・埼玉大会で「小学校外国語科用検定教科書とWe Can!の比較分析-4技能の言語活動の視点から」と題してオンラインで発表し、多くの聴衆とその内容について議論を深めた。また発表での議論を活かしさらに内容について考察を加え、令和4年7月に『言語文化研究所報第37号』に論文として公表する。 一方、これらの研究知見を広めるため、令和3年11月に東京学芸大学小学校英語プロジェクト主催小学校英語研修に加わり、現職教員研修を実施した。また、『創造的な学びを育む初等英語教育ー時代を超えて生き続ける理論と実践-』に共著者として参加し、プロジェクト重視の指導と評価について図などを加えて分かりやすく論じた。 さらに小中接続の観点から、小中の外国語科の教科書を出版している6社の中学1年生の教科書を移行期間に限定して内容と構成の両面から分析し、小学6年生への指導のポイントを探った。これらの分析資料と知見を基に、どの検定教科書でも導入可能な共通の題材を含むプロジェクト重視の英語指導計画とその評価方法を検討し、各学年1,2学期に1つずつ計4つのプロジェクトを作成し、令和4年度からの実施に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍であったが、実践校の各学級担任と打ち合わせを密に取り、令和4年度から実施するプロジェクト重視の指導への理解を得ることができた。また、実践校の指導にアドバイザー兼日本人英語講師(JTE)として加わりながら、児童の興味・関心や英語のレベルを観察し、指導計画の参考資料とした。 一方指導計画のための教科書研究に関しては、外国語科7社14冊全ての検定教科書の分析を行い、検定教科書を活用しながら担任中心の指導体制でどのようにプロジェクト重視の英語指導を行うか検討し、令和3年度小学校英語教育学会関東・埼玉大会で教科書の分析結果を口頭で発表し、聴衆と議論を深め、教科書を教えるのではなく、教科書で教えることの大切さを共有した。 さらに小中接続の観点から、小学校との接続期間に当たる中学1年生の外国語の教科書6冊を分析し、その分析結果から小学校6年生の指導のポイントを探った。これらの資料を基に令和4年度に実施するプロジェクト重視の英語指導計画と評価方法を作成した。よって、令和3年(2021年)度予定していた研究計画は、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4,5年度は、実践校の5,6年生に担任中心に研究代表者が担当する日本人英語講師(JTE)または外国人指導助手(ALT)とのティームティーチングと担任のみの指導の両方でプロジェクト重視の指導と評価を実施し、混合研究法でデータを収集・分析を行う。その後、同じ専門領域の研究者(協力者) に分析方法の検証を依頼し妥当性等を確認する。 一方、倫理的教育的配慮から対照群を設定しないが、半年以上英語使用国に在住していた児童は対象外とする。本来外国旅行経験や学外での私的英語学習経験の影響も考慮すべきであるが、実際には個人差が大きく範囲の限定が難しいため、今回は対象から排除しない。 令和4年度に4つのプロジェクトの指導と評価のデータを検証し、その結果を基に修正・改善したプロジェクトを令和5年度に実施し、2年間でプロジェクト重視の指導と評価の方法の精度を向上させ、さらに不測の事態にも備える。 ただし、令和3年度はコロナの影響で指導計画を十分に協力者と直接議論・検討する機会がなかったため、1学期のプロジェクトが終了した時点で、協力者に検討を依頼し2学期に向けて修正等を加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で地域間の移動や小学校への外部者の参加が制限されたため、指導計画作成が遅れたり、直接英語教育実践者 (協力者) に作成した指導計画と評価方法の検討を依頼することが難しかった。また、検討に関してもオンラインでの検討のみとなった。そのため、旅費や人件費・謝金に関して、当初の予算使用計画を大幅に修正することとなった。令和4年度に関しては、小学校での授業が対面で許される限り実施計画を遂行するとともに、作成したプロジェクト重視の指導計画が妥当か令和4年の1学期のプロジェクト実施後に検討を依頼し、修正や見直しがあれば行い、より良い研究体制を整え2学期に備える。
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