研究課題/領域番号 |
21K13095
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
芹口 真結子 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (70801158)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宗名論争 / 宗派間対立 / 東本願寺 / 浄土宗 / 浄土真宗 / 近世仏教 / 幕府交渉 |
研究実績の概要 |
浄土宗と真宗が「浄土真宗」の宗名をめぐって対立した宗名論争を題材に、近世日本に展開した宗派間対立が地域社会に与えた影響について検討した。2021年度は、①安永6年(1777)から天明元年(1783)までの東本願寺学僧・慧琳による対幕府交渉の具体像と、②天明末年~寛政初年の浅草有志寺院による幕閣への訴願運動について史料収集を進めるとともに、分析した内容を学会・研究会で口頭報告した。 ①に関しては、大谷大学図書館に出張し、安永6年から天明6年まで江戸に滞在して幕府交渉に従事した東本願寺学僧・慧琳と、東本願寺家臣粟津元昭との往復書翰などを閲覧・複写した。その調査結果は、2021年11月6日開催の佛教史学会第71回学術大会で、「宗名論争と東本願寺―安永末~天明初年の動向を中心に―」と題し口頭報告した。 ②については、2022年1月30日に開催された名古屋歴史科学研究会1月例会で、「宗名論争と東本願寺―浅草有志寺院・浅草御坊・本山の動向から―」と題する報告を行った。これは、天明8年に浅草御坊寺内寺院の宗恩寺大旭・光圓寺宝景・徳本寺頓朗が老中松平定信に駕籠訴を行った事件を取り上げ、3ヶ寺の行動が宗名論争の展開に与えた影響について考察したものである。 このほか、宗名論争の地域社会への影響については、2022年2月3日開催の真宗史研究会で、「地域社会における宗名論争の影響―京都の宅替手続きを素材に―」と題した報告を実施し、京都の門徒が転居する際に町へ提出する寺請証文の宗名記載をめぐり、処罰者が発生した事例を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受け、三河国の真宗史料の収集が当初の予定通りに進まなかった。そこで、2021年度は大谷大学図書館所蔵史料(「理綱院慧琳師書翰」・「理綱院慧琳師へ用書留帳」・「御宗名一件掛リ補忘記」など)や、これまで収集していた『本證寺文書記録類』諸巻・本願寺史料研究所蔵「諸国江遣書状之留」・「江戸江遣書状留」などの史資料の解読・分析を中心に行ってきた。その結果、安永6年から寛政初年までの東本願寺における対幕府交渉の実態の解明が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集してきた史資料や、2021年度に収集した史資料の分析を続けるとともに、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況に応じて安城市歴史博物館、各宗派本山史料がある大谷大学図書館や龍谷大学図書館、本願寺史料研究所、知恩院のほか、東本願寺家臣史料を所蔵する東京大学史料編纂所などへ出張し、西三河真宗寺院関連史料の調査・収集を行う。また、2021年度の口頭報告内容を学術論文にまとめ、各種ジャーナルに投稿・発表していく。
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