研究課題/領域番号 |
21K13096
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松本 和明 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70825934)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 朱印寺社 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、山形県立博物館所蔵稲葉八兵衛家文書について、一部を除く244点1900コマの写真撮影を行った。同文書群は、天童愛宕神社の門前に存在した、天童門前村の村役人を務めた家に伝わったもので、同村は愛宕神社の別当でもある山形宝幢寺の寺領村であり、宝幢寺領支配の実態を明らかにするうえで欠かせないものである。 宝幢寺領については、山形付近の西田表・中野郷、天童近在の天童郷に三区分され、前者は宝幢寺直支配、後者は門前村役人が年貢徴収その他支配にあたっており、門前村のみならず、天童郷所属の寺領について、当該地域に特徴的な質地関係文書が多く確認できた。その結果、幕末期の寺領質地については、質入れ人がまずは門前村役人へ届け出のうえ、奥書を付してもらい、宝幢寺役人へ届けることが明らかとなった。また、門前村役人には宝幢寺より「知行田」が給付されていたが、それすらも質入れ対象となっていたことも窺えた。 本文書群についての本格的分析はこれから実施する予定であるが、国文学資料館所蔵出羽国山形宝幢寺文書30点550コマの撮影も行っており、宝幢寺側の記事と門前村の記事とを突合させることで、宝幢寺領支配について立体的な分析が可能になると考えられる。なお、稲葉八兵衛家文書については、撮影データを博物館へ寄贈した。 また、自らが所蔵している、山形寺社関係近世文書について、一点ごとに仮番を付したうえで中性紙封筒へ入れ、さらに中性紙箱へ収めて保存体制を整えた。あわせて、全点撮影を行い、デジタルデータ化も実施した。 その他、比較の視点から、静岡市臨済寺において、同寺文書のうち寺領に関係する45点250コマの撮影を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による緊急事態宣言の発出により、遠方での調査・撮影が一時期実施不可能になるなどの影響が出たが、年度内に実施予定であった調査は完了した。 ただ、前述の理由により年度末の調査となったため、翻刻・分析などの作業についてはやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
撮影史料について、翻刻・分析を行う。その際、特定の一ヵ村の朱印地について、既調査済み史料も用いながら分析を行い、具体的な朱印地管理のあり方を追究する。並行して、宝幢寺文書のうち基軸となる「当番帳」のうち未撮影分について撮影収集を行う。近世後期を中心に寺領支配関係の分析を進め、その特質を明らかにする。 また、臨済寺文書の撮影も継続して実施し、同寺寺領支配の全体像を把握するとともに、出羽の寺領1,370石と、駿河の寺領100石の寺院について、比較の視点から検討を行う。 上記の調査収集にあたり、旅費と人件費・謝金を用いる。とくに宝幢寺関係文書の調査については、複数人で3日間程度を予定する。また、筆耕作業にも人件費・謝金を用いる。これについては、調査作業を優先し、その進捗状況に応じて判断する。
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