研究課題/領域番号 |
21K13098
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中川 未来 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60757631)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東亜同文会 / 東亜同文書院 / ナショナリズム / アジア主義 / 国粋主義 / 対外硬 / 中国認識 / 田舎青年 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①荒尾精の経済構想における「地方実業家」の位置づけを分析することで「アジア主義」における「地方」の役割を理論的に解明する、②東亜同文会の言論機関『東亜時論』『東亜同文会報告』の紙面を分析し両紙の読者層や読者組織を明らかにすることで「アジア主義」の受容者・需要者を特定する、③東亜同文会の地方支部(国内)を網羅的に調査し、特定の支部についてその成立の政治経済的背景を検討することで、「アジア主義」の支持基盤を明らかにすることである。このうち今年度は、①②を重点的に行った。実績の概要は次の通りである。
1)1890年代における対外硬言説の地域的流通をめぐる調査・研究:東亜同文会が展開した活動を地域社会が受容する基盤を検討すべく、1890年代において対外硬言説が流通する構造と政治的機能を、「千島艦事件」(1892年)を事例に調査・研究し、論文として公刊した。また、東亜同文会が依拠する「亜細亜」なる地域認識の政治的機能を検証すべく、日清開戦を正当化する論理となった「東洋文明回復」論について、久米邦武、高橋健三、内藤湖南の言説を事例に調査・研究し、分担執筆に加わった研究書において論文として発表した。
2)東亜同文会の青年会員の意識をめぐる調査・研究:荒尾精の影響を受け、東亜同文会の運動主体となった青年層の意識形態を検討すべく、「地方実業家」の経済的支援を受け東亜同文書院(南京同文書院)に入学した神津助太郎の中国認識を調査・研究し、研究ノートとして公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行を受け、所属機関では県外出張が強く規制され、当初予定していた史料調査の実施が不可能となった。その代替措置として、本基金を活用しアジア貿易の中心であった明治期の大阪・京都・神戸の実業者団体、とりわけ大阪商業会議所の刊行物を含む史料データベースと契約し、オンラインでの史料アクセスを向上させることができた。 その結果、史料調査の実施と同等の効果を上げることができ、当初の計画を順調に進展させることができた。一方で、今後の研究計画では各地での史料調査が不可欠となるため、感染症の流行状況を見極めつつ、機動的に調査を実施することが必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、以下の方針のもとに研究を実施する。 1)新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めつつ、上記課題③の検討に不可欠な各地での史料調査を機動的に実施する。具体的には、少なくとも東亜同文書院関連史料を収蔵する愛知大学東亜同文書院記念センターでの史料調査、また近衛篤麿が関与した雑誌を所蔵する同志社大学図書館での史料調査を実施できるようにする。 2)本研究課題による研究成果を学界と社会に還元すべく、今年度に引きつづき論文の公刊と学会等における成果報告に努め、また各種マスコミ等の取材には積極的に応じることとする。
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