研究課題/領域番号 |
21K13101
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
三好 英樹 京都府立大学, 文学部, 研究員 (60757574)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 根来寺 / 学僧 / 山伏 / 伽藍 / 空間構造 / 地域社会 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本中世に顕密寺院を中心として形作られる地域社会の形成過程と内実について、紀伊国根来寺を事例に明らかにすることを目的とする。中世後期、「地域的な一揆寺院」とも評価され地域社会の中核となる巨大な顕密寺院が出現し、根来寺の場合、和泉国・河内国にまで拡がる地域に影響を及ぼした。その要因として、周辺地域の人々が行人方となり根来寺へ多数入寺したこと、彼らが寺内に富を蓄積するとともに、武力行使や流通・経済活動を活発に行ったことなどが先学により解明されている。ただ、信仰や宗教の役割は、あまり注目されていない。しかし、中世根来寺の展開において、学僧や修験者・山伏といった宗教者らの、寺内外における宗教活動の重要性が明らかになりつつある。本研究では、根来寺を分析対象として、信仰や宗教が果たした役割に着目し、国境や庄域を超えて形作られた広範で多様な地域社会の形成過程と内実について、根来寺の寺院としての展開を視野に入れながら、原史料調査の成果も積極的に用いることで考察する。 3年目となる本年度は、中世根来寺と地域社会の関係を考察するための原史料調査を、これまで以上に幅広く精力的に実施した。加えて、前年度に引き続き、把握した史料の整理・分析を行うとともに、刊本などからも関連史料の収集に努めた。また、広域のみならず、地域の中心たる根来寺伽藍の域内の有り様も明らかにするため、僧侶らの修学や研鑽といった日常生活とその活動空間などについても考えを深めた。そのほか、地域社会と修験の関係について、葛城峯を対象として他寺院を事例に考察した。その成果の一部は、学会などにて報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にもとづいて、根来寺関連史料の調査・収集・整理・分析を、おおむね計画通り行うことができた。ただ、原史料調査については、初年度に計画していた幾つかの調査が新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって実施出来ず、調査開始を延期せざるを得なかったため、若干計画より遅れている。しかし、これまで実施した調査によって学界未紹介の史料を見出せたことや、原史料調査の許可を得ることが難しかった寺院において調査実施が叶うなど、研究実績概要に記載した通り着実に研究は進んでいる。そのため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究目的を達成するため、次年度も原史料を含む根来寺関係史料の調査・収集を、更に積極的に行うとともに、本年度までの調査成果を踏まえて、翻刻・整理・分析を鋭意進めていく。その上で、学僧や修験者・山伏らによる地域社会での宗教活動などに着目し、根来寺伽藍の造営や地域社会の形成における役割を明らかにすることで、根来寺の伽藍や根来寺を中心とした地域社会の形成過程、内実、展開について考察を深めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の初年度に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、予定していた原史料調査のための出張をいくつか行うことができず翌年度以降にずれ込んだため、本年度実施予定の出張を何カ所か実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。調査を実施する資料の所蔵先との調整はついているため、現在実施できていない原史料調査のための出張を次年度に実施し、また調査・分析・検討に必要な書籍、目録、資料などを購入する予定である。
|