研究課題/領域番号 |
21K13103
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加藤 祐介 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (20848478)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日本近現代史 / 日本政治史 / 近代天皇制 / 象徴天皇制 / 皇室制度 / 皇室財政 |
研究実績の概要 |
(1)宮内庁宮内公文書館、国立国会図書館憲政資料室、国立公文書館などが所蔵する史料の収集・分析:2022年度に引き続き、1888~1947年における皇室財政の制度と実態、有価証券投資の実態、占領期における皇室財政の解体過程、皇室経済法および同法施行法(1947年)の制定過程について検討を進めた。2022年度に引き続きGHQ側の政策過程の検討を深め、皇室財政の解体という政策領域において、民政局が主導権を握っていくプロセスを明らかにすることに努めた。また2023年度は、皇室財政中の恩賜金支出の動向について分析に着手した。恩賜は、皇室が政治的・社会的影響力を行使する上で重要な回路の一つであり、先行研究においても検討されてきたが、なお未解明な点が多くある。本研究課題はこの問題にかんしても、若干の論点を付け加えることができるのではないかという感触を得ている。 (2)各種データベースを用いた関係資料の収集・分析:新聞・雑誌記事・同時代の書籍などについて、2022年度までに収集した史料の分析を進める一方で、補足的な調査を行った。 (3)研究成果の公表:本研究課題の成果と、これまで発表してきた皇室財産への課税問題、御料地処分政策の形成・展開過程、御料地をめぐる地域住民の運動などにかんする論考を集成した単著『皇室財政の研究―もう一つの近代日本政治史』を刊行した。この点は2023年度の大きな成果だと考えている。なお、著書については、広く学界から意見を求めるために献本を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
covid-19の感染が落ち着いたこともあり、史料調査と研究発表をほぼ予定通り行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究課題の成果をまとめた単著を刊行することができた。今後、一定の反響が見込まれるため、積極的に応答していきたい。 また単著には十分な形では盛り込めなかった本研究課題の成果として、①宮内省御料局の地方部局ごとの収支の実態、②皇室財政中の恩賜金支出の動向、③GHQ内における皇室財政解体をめぐる政策過程、④戦後の象徴天皇制の下における皇室費論議の動向がある。2024年度は、これらの課題について調査研究を継続し、一部は論文として発表することを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の影響が大きかった2021~2022年度の未使用分を全て使い切ることはできなかったため、若干の未使用額が生じた。これについては追加の文献購入費などに充当する予定である。
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