研究課題/領域番号 |
21K13107
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
山本 康司 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (50892832)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 室町幕府 / 訴訟 / 特別訴訟手続 / 下知状 / 端裏銘 |
研究実績の概要 |
本研究は、南北朝期の室町幕府で行われた特別訴訟手続について検討を行うものである。初年度は、計画の手始めとして、南北朝期の訴訟事例のなかから、御前沙汰に関する事例の収集・検討、端裏銘のある申状の網羅的収集・検討、下知状の収集・検討を行った。いずれも刊行史料を中心に収集・検討し、適宜、デジタル公開された史料の閲覧や史料所蔵機関への出張を行った。 端裏銘とは、訴訟担当の幕府奉行人が申状の端裏(文書の右端の裏の部分)に文書名や日付を書いたものであり、特別訴訟手続が行われた事例の申状には奉行人によって端裏銘が書かれると指摘されている。この端裏銘のある申状を網羅的に収集し、建武5年(1338)から永和3年(1377)までの計41通を検出することができた。遺漏はあると思われるが、通時的な分析に耐えうる事例数は確保できたものと考えている。収集した申状を分析した結果、端裏銘のある申状の時期的分布や端裏銘を記した奉行人について知見を得ることができた。引付頭人奉書や下知状の分析はこれまで多く行われてきたが、申状提出の段階から訴訟制度を論じるための準備ができたものと考えている。 また、下知状の検討を行い、訴訟過程における訴陳・判決・執行のあり方や、発給文書(引付奉行人奉書・引付頭人奉書・下知状・御判御教書)の使い分け、訴訟における守護の役割などについて知見を得た(一部を「南北朝期室町幕府訴訟制度とその運用」として口頭報告を行った)。さらに、御前沙汰から発給されると考えられている御判御教書と理非究明のあり方に関しても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
端裏銘のある申状の収集に、想定外の時間がかかった。その理由としては、刊行された史料集のなかには端裏銘を翻刻していないものがあったこと、端裏銘のなかには端裏書と見分けがつけにくいものがあったこと、端裏銘のある申状に据えられている花押の人物比定に時間がかかったことが挙げられる。 また、関連する先行研究の精査を進めていくなかで、先行研究における課題や議論されていない論点が想定よりも多くみつかったため、その検討も行った。このことも、研究に遅れが生じた原因である。 ただし、全体としてみれば、着実に研究を進行させることができている。次年度では、新たに見つかった論点とあわせて特別訴訟手続の研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、史料調査・検討を進めるほか、訴訟の進行のあり方と特別訴訟手続の活用のあり方、特別訴訟手続の登場と下知状の減少の関係性について、より深く研究を進めることにしたい。 また、研究成果を論考や学会報告のような形で発表することにも努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
並行して行っている研究課題(「南北朝期室町幕府政所の基礎的研究」課題番号20J00525)と必要な図書が重複したこと、新型コロナウイルス感染症の影響により史料調査を頻繁に行えなかったことなどにより、当初の予定より研究費の支出が抑えられることになった。 次年度分として請求した分と合わせて、追加調査のための旅費、関連図書・写真紙焼きの購入費などに充てることにしたい。
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