本研究では、南北朝期室町幕府訴訟制度における特別訴訟手続(審理手続きを省略して、訴人に論所の知行を全うさせる手続き)について論じたものである。訴訟手続きにおける沙汰付(所領の引き渡し)と訴陳について分析を加え、論人に対する答弁命令や出頭命令が発給文書を伴わない形で伝達されることがあったことや、観応の擾乱以後において下知状に代わって御判御教書が判決文書として用いられていたことを指摘した。また、南北朝期を通じて訴陳を経た訴訟(特別訴訟手続ではない訴訟)が継続していたことや、柔軟な訴訟審理が行われていたことを論じた。
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