本研究課題により、9世紀後半に天皇菩薩観が喧伝されるその政治的意義が明らかになった。また死した天皇の霊魂への祈願内容の変遷も検討したが、そこには必ずしも中国仏教から影響を受けていない点も明らかにできた。加えて、8世紀末から9世紀初頭日本の仏教統制策を検討し、8世紀初頭の唐仏教からの影響を受けていることがわかり、その歴史的位置が解明された。従来、その政策が国王の在るべき姿を説く経典の注釈に依拠していることが明らかにでき、統制的側面を重視する従来の研究とは異なる研究方法を提示できた。これらを通じて、東アジアにおける日本仏教の位置づけを考える上でも重要な論点を提示できた点に大きな意義があると考える。
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