研究課題/領域番号 |
21K13109
|
研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
春藤 献一 国際日本文化研究センター, 研究部, 博士研究員 (70875319)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 動物愛護 / 動物実験 / 実験動物 / 動物福祉 / 動物の権利 / 動物の愛護及び管理に関する法律 / 人と動物の共生 / 動物愛護センター |
研究実績の概要 |
本研究は、太平洋戦争後の日本において、実験動物の取扱いと、動物愛護団体等が行った働きかけとの影響関係の歴史を明らかにしようとするものである。 日本においては、1950年代以降、実験動物の飼養環境を改善しようとする運動が起こり、動物実験実施機関と協力関係を構築した。また1980年代後半以降には、日本に導入された動物の権利論に立脚した諸団体も成立し社会運動を展開した。本研究ではこれらの社会運動と、動物実験実施機関、そして一方では動物実験を規制し、一方では実験用犬の供給源であった犬抑留所を運営した行政、これら三者の動物実験を巡る影響関係を検討する。 そして、多くの場合、非終生飼養となる実験動物の取り扱い方を、人と動物の共生を掲げる動物愛護管理法の枠組みの中で議論していることについて、歴史的な観点から検証することを目指す。
2022年度は本研究課題の2年目であったが、初年度に新型コロナウイルス対策による行動制限の影響を受けたことから、本来初年度に実施すべき資料調査を含めて研究を行った。 本研究では、動物実験に関する、①動物愛護関連団体の活動、②動物実験実施機関・業界団体の活動、③行政の活動の3点から、④日本における人と動物の関係史や、動物愛護思想について検証する。①については、資料調査及び精査を行い、重要な逐次刊行物については総目次の作成を行った。②についても資料の精査を行い、行政から動物実験実施機関に実験用に動物が供給されていた時期の行政実務について論文を執筆し、間もなく刊行予定である。③については資料が思いの外少なく、調査が進んでいない。④については、動物愛護管理法の言う動物愛護のあやふやさについて、セアカゴケグモの取り扱いを入り口に検証する論文を執筆し、刊行された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度にコロナ禍の影響を受けて生じた計画の遅れを、2022年度だけで解消することはできなかった。特に、動物実験実施機関や業界団体の活動については、資料調査が難航している。一方で、動物愛護関連団体に関する資料調査においては、1980年代以降の行政について、批判的視点から報告された記事が多数見つかっており、人と動物の関係史を検証するための重要な参考資料となることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、引き続き資料調査を行いつつ、動物愛護関連団体、動物実験実施機関・業界団体、行政の3者の影響関係について、発表を行い、論文の執筆を進める。特に、動物愛護関連団体の活動については、十分な調査ができつつあることから、これらの活動に関する事実関係や意図の整理に重点的に取り組みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にコロナ禍のため予定していた調査旅行を行えず、また学会がオンライン化されたことで、予定よりも旅費が少額となった。2022年度についても、一部の学会が引き続きオンラインとなっため、予定よりも旅費が少額となった。
|