研究課題/領域番号 |
21K13113
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
堀内 香里 東北学院大学, アジア流域文化研究所, 客員研究員 (60867357)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | モンゴル史 / 近世内陸アジア史 / ジェンダー史 / 家族史 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世モンゴル遊牧民社会のジェンダー秩序の解明を目指すものである。そのためにこれまで、現地のモンゴル人が書き残した史料から人々の生活が垣間見えるものを収集し、そこから特に「家族」を巡る問題が如何に調整されていたのかを分析することを通して、基層社会における人間関係や各個人の規範を考察してきた。 その結果、特定の領域における女性の発言権の大きさが示唆された。それは単に社会的に受け入れられていただけでなく、法例にも明記されていることもあり、実際の行政手続きでもそうした法例が引用されて、事案解決の根拠となっていた。こうした女性のあり方は、当該社会の「家族」のあり方、血縁的な人間関係の特質に密接にかかわっていると考えられる。 行政や社会の運営が主に男子によって行われていた前近代モンゴル社会においては、人々が家族やその他の人間関係の中で営まれていた日常生活に焦点を当てることがジェンダー規範を考察するのに有用である。それゆえに、これまで主に家族の問題を取り上げて分析を行ってきたが、ジェンダーの規範やその秩序の解明には、この「家族」の解明が喫緊の問題であることが判明した。 そこで当該年度では、ケンブリッジ大学社会人類学部に半年ほど所属し、内陸アジア社会の親族集団に関する人類学的研究の成果を調査した。同学部は、内陸アジア遊牧民国家の構造や「親族組織」を歴史人類学的に研究する先駆的な機関である。 次年度以降は、当該社会における「家族」の特質の解明をも研究目的の一つとしつつ、引き続きジェンダー秩序の解明に向けて人々の日常的な実践を取り上げて逐一分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の研究の過程で、近世モンゴル遊牧民社会におけるジェンダー秩序の解明にあたっては、当該社会の「家族」のあり方を検討する必要性が明らかになった。それゆえに、先に家族史研究に着手しなければならず、当初の予定よりジェンダーの規範やレジームの解明が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の遂行にあたって、近世モンゴル遊牧民社会における家族の特質を明らかにさせる必要が生じた。そこで内陸アジア遊牧民社会における親族組織の社会人類学的研究を取り入れつつ、近世という時代におけるモンゴル遊牧民らの家族関係、親族組織の特質を明らかにし、そこにおけるジェンダー規範を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での長期出張中に、他大学の経費による他国への出張が必要となった。そのため、当初の計画よりも海外出張滞在数が減り、予算が予定より低額となった。帰国が3月半ばに差し掛かっていたために、その余剰を翌年度に移し、学会発表の出張費に充てる予定である。
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