研究課題/領域番号 |
21K13115
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
板橋 暁子 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (30837290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 五胡十六国 / 南北朝 / 隋唐 / 妻妾 / レヴィレート婚 |
研究実績の概要 |
本研究における今年度の主要実績は、まず研究報告として、2022年11月開催の第13回中国中古史青年学者聯誼会にて「関於嫁給高歓的茹茹公主」と題した中国語報告をおこなった。本報告では、東魏末期の最高実力者であり魏斉革命の土台を築いた高歓が北方の脅威たる遊牧民族の柔然と通婚して柔然首長の娘(茹茹公主)を娶った事例に着目し、両勢力の関係・習俗を背景としたレヴィレート婚実践の可能性を検討した。そして、伝世文献(正史)と出土資料(墓誌)にみえる茹茹公主への呼称の不一致は、柔然側へ配慮しつつ東魏(北斉)内部の権力構造を維持せんとする高歓側の意図が反映されたものであり、西魏北周と対峙する東魏北斉が柔然との提携強化を模索するなかで生み出された矛盾であることを論じた。本報告は査読雑誌への投稿を予定している。 また、大澤正昭著『妻と娘の唐宋時代:史料に語らせよう』への書評(『WEB東方』2022年5月)をおこない、小説史料や裁判史料を用いて唐宋時代の夫婦関係や親子関係を浮かび上がらせる同書を評するなかで、唐宋史研究における小説史料の活用や留意点について論じた。 また、小野響著『後趙史の研究』への書評(『唐代史研究』25、251~260頁、2022年8月)をおこない、五胡十六国時代の主要政権の一である後趙の歴史的意義を論じた同書を評するなかで、後趙宗室関連の史料には公主などを介した他政権との通婚に関する記録が乏しい点に、五胡十六国時代の諸政権からみた後趙の特殊性が反映されている可能性を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、本研究のテーマとは直接関係しない博士論文の書籍化準備などのために時間を要したこともあり、論文・書籍の形で本研究の成果を出すことはできなかったが、今年度および昨年度の研究報告内容をふまえて来年度に複数の雑誌に論文を発表するための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたり、魏晋南北朝隋唐時代の婚姻を、前後の時代との継承・断絶にも着目しながら総括する。とくに、律令上で規定された妻妾の法的地位や関係性と実際の社会/家庭における運用を、隋唐の律令制度を継受した朝鮮半島や日本など周辺地域の状況とも比較しながら検討してゆく。
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