2023年7月開催の 2023 ISCLH (International Society for Chinese Law and History) Biennial Conference にて「Getting Promoted to a Wife: Flexibility and Inflexibility of Domestic Female Status from the Tang to the Ming-Qing Period」と題した報告をおこなった。唐律と違い明清律においては現に妻がいる場合を除き「以妾為妻」が禁じられなくなったという変化に着目し、唐~明清期の家庭内における妻と妾の地位の可変性について検討した。また2023年10月開催の日本中国学会第75回大会にて「東晋元帝と後漢光武帝をめぐる礼議」と題した日本語報告をおこない、婚姻がその一部を構成する礼制という枠組において展開された王朝の正統性に関する議論を検討した。 また、小浜正子・落合恵美子編『東アジアは「儒教社会」か?:アジア家族の変容』への書評(『WEB東方』2023年5月)をおこない、近世を起点として東アジア各地域における儒教と家族の変容を提示する同書の特色について論じた。 また、2022年11月におこなった中国語報告「関於嫁給高歓的茹茹公主」を土台として日本語論文「高歓に嫁いだ茹茹公主の処遇をめぐる諸問題」を『中国出土資料研究』に投稿し、査読を通過して掲載準備中である。同論文では、東魏北斉革命の礎を築いた高歓が柔然から娶った女性(茹茹公主)の墓誌を軸として、『北史』等の編纂史料と墓誌の記述の齟齬に着目し、茹茹公主の称号と婚姻履歴の実態、その背景について論じた。 研究期間全体を通じては、魏晋南北朝隋唐期の婚姻実践の中でも特に妻と妾の礼法上および実社会での位置づけについて、詳細に検討を進めることができた。
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