研究課題/領域番号 |
21K13132
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
日尾野 裕一 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (80804012)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近世イギリス史 / 西洋史 / イギリス史 |
研究実績の概要 |
18世紀、特に18世紀初頭のイギリスにおける植民地通商政策および資源調達政策を奨励金制度という枠組みから検討している。これは貿易独占権を含めた特許を特定の会社に付与することで通商の振興を図った17世紀における重商主義的政策から、貿易への自由な参入を促し、奨励金を交付することでその参入者を増加させていくという18世紀の重商主義的な政策への転換を念頭に置いたものである。2022年度については、イギリス経済史の中でもまだ研究対象として十分な検討がなされていない奨励金制度についての研究の深化を図った。本来の実施計画では17世紀末から18世紀初頭にかけて展開された「特許会社設立」か「奨励金制度」かという議論を取り扱う予定であったが、2020年度から続く新型コロナウイルス感染症流行に伴い、2022年中まで海外での資料調査ができなかったことで、国内にて検討可能な研究対象に焦点を切り替えたという背景がある。 具体的には、1705年に制定された海軍資材法という法律によって輸入奨励金制度の導入によって貿易への参入障壁が低減したことが商人の経済活動にどのような影響を与えたかということを、18世紀前半のイギリス海軍と商人との物資納入契約を事例として検討した。この研究成果については論文にまとめ、現在国内査読雑誌にて審査中である。 また、上記研究と並行し、17世紀から18世紀にかけての植民地における土地利用が奨励金制度の導入によってどのような影響を受けたかという点について、麻・亜麻の生産に焦点を当てた研究をしている。これについては、2023年5月に名古屋大学にて実施される日本西洋史学会における自由論題報告でその一端を公開することになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年から2022年にかけて新型コロナウイルス感染症流行に伴い、海外での史料調査ができなかったことで研究の進捗は不可避的に予定とは異なる展開を見せている。2022年度までは刊行史料の分析および2019年以前に収集し、本研究課題に関わる内容の史料の分析を通じて研究を実施してきた。特に奨励金制度に基づく植民地経済政策と植民地環境利用との関わりについて、2023年5月の西洋史学会にて報告することとなっている。2023年3月に本研究課題遂行を目的としたイギリスでの史料調査を実施したが、そこで収集した史料は本研究課題の重要な点である、特許会社設立と奨励金制度の導入の是非をめぐる議論であり、現在分析・検討をおこなっている。この研究成果を踏まえつつ、2023年にも予定されている史料調査にて収集されることが推定される史料の利用も考慮しながら研究計画の修正を行いつつ、研究課題の遂行に努めていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、第一に言及すべきは海外での資料調査を含めた研究計画の大幅な見直しである。新型コロナウイルス感染症流行に伴い令和3年度から令和4年に海外での資料調査ができなかったことで、令和5年度の海外での資料調査について変更を加える予定である。具体的には令和5年度もイギリスでの資料調査を組み込む。また、昨今の航空運賃の高騰、円安、宿泊施設利用費の高騰といった要素により、在外研究に必要なコストが予想を超えて上昇していることを考慮し、アメリカでの資料調査は大幅に縮小、もしくは中止する可能性があることも検討している。その場合はイギリス、ロンドンの国立公文書館、大英図書館での史料調査を重視し、商人、海軍、商務員、政治家、植民地行政官といった本研究課題に関わるアクターの言説を丁寧に収集することで、研究課題の達成を図る。また、その成果は国内外の査読誌に投稿する形で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行により、令和3年度は海外での資料調査を断念した結果、次年度使用額が生じることとなった。令和3年度、令和4年に実施するはずであった資料調査を補うために、令和5年度に実施予定の海外での資料調査期間を研究計画段階よりも長くとることを計画しており、この次年度使用額は在外資料調査期間延長に伴う経費の増加を埋め合わせるために使用することを計画している。
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