研究課題/領域番号 |
21K13134
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
呂 梦 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 博士研究員 (90894288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蓮華文瓦当 / 三次元計測 / 製作技術 / 南北朝隋唐時代 / 物質文化交流 |
研究実績の概要 |
研究の中心となる海外調査は、2021年の7月~9月の2ヶ月間にギョウ城と長安の二つの中国北部の都城遺跡へ赴き、中国社会科学院考古研究所ギョウ城考古隊、中国社会科学院考古研究所西安研究室と共同研究を実施した。その間、ギョウ城核桃園遺跡群と趙彭城寺遺跡、双廟窯跡、長安青龍寺、西明寺遺跡から出土した蓮華文瓦当の三次元計測を実施した。この作業により、瓦当の形態的特徴と製作痕に関する情報を収集し、報告書記載の瓦当文様や出土状況などの情報と合わせて、すでに作成している北朝系瓦当のデータベースを拡充した。特に、ギョウ城双廟窯跡から出土した十六国時代の蓮華文瓦当は、これまでに中国北方で発見された最古の蓮華文瓦当であり、中国北方における蓮華門瓦当の様式・技術系譜の研究に対して、極めて重要な資料である。型式分類と三次元計測以外に、シリコーン樹脂を用いたレプリカ法で瓦当表面の製作痕を採取し、走査型電子顕微鏡で観察した結果、これらの瓦当が木笵で作られたことを確認した。 現在、「ギョウ城双廟窯跡出土蓮華文瓦当の基礎分析」と、「ギョウ城核桃園5号建築遺跡出土瓦の製作技術と生産組織」、「北朝造瓦手工業の生産組織」、「北朝隋唐における瓦当制作技術の変遷」(いずれも中国語)に関する四つの論文が完成し、『考古与文物』や『首届中国考古学大会論文集』などの学術雑誌と論文集に投稿した。「ギョウ城核桃園5号建築遺跡出土瓦の製作技術と生産組織」に関する論文は印刷中である。また、「瓦からみた雲崗石窟窟頂西区寺院の造営過程」(日本語)については、2022年1月の「日本中国考古学大会」にて口頭発表を行い、現在は論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、中国北部での資料収集以外に、博士課程在籍中で入手済みの資料をまとめ、さらに瓦当の最新の出土状況を把握するために現地の発掘担当者との意見交換を行う。 現地で瓦当の三次元計測を順調に実施しており、また博士課程で収集済の北朝隋唐寺院出土瓦当のデータ、報告書の瓦当関連記録と合わせて、中国北部における北朝隋唐時代の大型建物から出土した蓮華文瓦当の資料を網羅的に把握している。これをもとに、北朝系蓮華文瓦当の生産技術・生産組織を明らかにし、論文執筆を行い投稿した。すでに公表された型式学分析・使用状況に関する論文に加えて、生産状況に関する研究も行い、北朝系蓮華文瓦当の様式・技術系譜を考察した。 全体的に見れば、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、建康と揚州、広州の三つの南部の都城遺跡へ赴き、南京大学などの研究機関所蔵の蓮華文瓦当に対する型式分類と三次元計測を実施することで、南朝系瓦当の形態的特徴と製作痕に関する情報を収集し、データベースを作成する。そして、これをもとに、南朝系瓦当の様式・技術系譜を明らかにする。最終的に、北朝系瓦当と南朝系瓦当の研究成果を統合して地域間、特に中国南部と北部や、北部の太行山脈の東西両側に見られる瓦当の各要素の異同を分析し、先行研究を参照しながら中国における蓮華文瓦当の生産使用状況とその背後にある社会的変遷を検討する。 CIVID-19の影響により訪中ができない場合は、現在進行中の研究に継続して、2023年度に予定している瓦当の拡散状況を把握する研究のために、ギョウ城双廟窯跡出土瓦当に見られる高句麗や日本豊浦寺式の瓦当の特徴である花弁中央の凸線のような、朝鮮半島と日本の蓮華文瓦当との共通点を見出した比較研究を行う予定である。
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