研究課題
若手研究
本研究では近畿各地域における古墳埋葬施設の構造検討を主な手段として、特に古墳時代中期における葬制変遷過程の比較分析を実施した。その結果、前期においてみられた地域の葬制の伝統が中期に入ると全面的に刷新され地域的伝統が断絶すること、一方でそこに至るまでの期間やプロセスには地域により差があることを明らかにできた。また中期に解体された地域秩序が後期の横穴式石室導入に際して復調するものの、階層的な浸透状況や畿内型石室としての画一化の進行などで、前期とは異なるダイナミズムを見せることも推測できた。
考古学
これまでの古墳時代葬制の研究では、古墳出現期を中心とした古墳時代前期、横穴式石室の導入以後にあたる古墳時代後期が主な対象となってきた一方、墳丘規模が最大化し、様々な面で古墳時代の中でも特徴的な状況を見せる中期の葬制については、その実態が明らかにされてこなかった。今回の研究では中期における近畿各地における葬制秩序の実態を、特に前期との比較という視点から考察し、継続性の解体と秩序の再構築的刷新という時代的特性を明らかにした点に意義がある。