研究課題/領域番号 |
21K13139
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
平川 ひろみ 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60887024)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身体技法 / 土器製作 / モーターハビット / 身体動作 / 三次元計測 / 認知考古学 / 情報考古学 / SfM-MVS |
研究実績の概要 |
本研究は,土器の「静的」な痕跡から,失われた過去の製作者の「動的」かつ具体的な身体技法を復元する方法論の構築に向けて,基盤部分の把握と解明に取り組むものである。 今年度も昨年度に引きつづき,土器資料と映像を含む各種デジタル資料の収集と整理を行った。また,主な対象である現代土器の三次元計測・解析を推進した。これにより3Dモデルと現物双方の土器表面の痕跡を詳細に観察できるようになり,動作と痕跡の関係について具体的検討が進んだ。特に「タタキ痕」について各種解析ソフトウェアの高度な応用を試み,痕跡の適切な可視化法などを検討した結果,痕跡の特徴把握が容易になった。これにより土器製作者個人内/個人間において,痕跡のパターン,身体動作の類似と差異,技術のブレや安定性等について,形態との関係も変数に入れた検討がしやすくなった。 一方,土器製作技術の理解に認知考古学的視点は不可欠であり,関連他分野の研究状況の把握も継続し,製作者-道具-土器の関係についての理論的検討がさらに進んだ。そうした成果の一端は,心理学分野の学術誌で発表し「モーターハビット」や「身体技法」など本研究の基盤となる理論・概念の学史的な再検討をするとともに,本研究対象に密接に関わる視点を整理できた。日本基礎心理学会でも関連する招待講演をするなどし,本研究が広く貢献できるという手応えを得た。そのほか,分野を超えた統合的領域である科研費・新学術領域「出ユーラシアの統合的人類史学」第8回全体会議での招待講演や,国際学会ではWorld Archaeological Congress-9で発表したが,今後の研究遂行に役立つ反応があった。 新型コロナ感染症対策等の影響はあったが,以上のように研究を推進することができた。なお,種類の異なる資料の分析など様々な機会に本研究の視点を応用し,適用範囲や意義を確認できたのも成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き新型コロナ感染症の影響等で,当初土器資料の三次元計測に多少の遅れが出ていたが,いっそう効率的な計測方法を工夫するとともに協力者等の援助のおかげもあり年度後半には作業スピードを上げることができた。3Dモデルを用いた各種解析に向けた基礎データの検討や解析を進めつつある。その他,土器表面に残る痕跡の可視化法について検討を行い,成果を得ている。研究実績に記載のように理論面や,幅広い適用の面でも成果があり,以上から,全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
土器資料の三次元計測作業を推進しながら,形態計測および動作を含む各種解析・検討を行う。土器に残る痕跡と製作者の動作の対応関係について具体的な検討を進め,整理する。また,実験考古学的検討を含む多角的検討を実施する予定である。なお,最終年度につき,土器の痕跡と製作者の身体動作の具体的な対応についてまとめるとともに,製作者-道具-身体の関係や派生する方法上・理論上の展開などについても可能な限り進めることとしたい。なお,残りの期間を有効に活用し,できるだけ高度な成果を上げるよう努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:前年度から続く新型コロナ感染症の影響から,土器資料の整理,破片接合や三次元計測の基礎作業に伴う雇用が難しかったことに加え,資料調査等の出張が難しかったこともその理由である。 使用計画:三次元計測等の対象資料が多いため,本研究に必要分を完遂するための雇用や関連する物品等の調達に使用する予定である。
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