研究課題/領域番号 |
21K13140
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
浦 蓉子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (80746553)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 出土木製品 / 残材 / 植生 / 木屑 / 平城宮 |
研究実績の概要 |
本研究は奈良盆地北半部地域をモデルケースとして、「残材」や「自然木」という視点を導入することにより、平城宮下層遺跡から出土する木製品を周辺の植生環境や木材加工の現地性を踏まえて位置づけ、古墳時代における集落の木材調達とその利用を明らかにすることを目的としている。 当該年度は平城第48次調査(1986年度調査)で出土した雑木・木屑・残材について選定し、樹種同定をおこなった。雑木は心持丸木材で、一部樹皮が残存するものも含まれた。周辺環境を示すと考えられる雑木の樹種にはコナラ属アカガシ亜属やコナラ属コナラ節、コナラ属クヌギ節、スダジイやサカキ、ツバキ属などの樹種がみられた。木屑については実測図を作成した。板目と柾目のものがあり、樹種はヒノキやモミ属であった。雑木と木屑には樹種の差がみられる。 また、奈良時代の周辺環境との比較や利用樹種の差をとらえることを目的として、平城京左京三条一坊十五坪から出土した雑木・木屑・残材について図化と樹種同定をおこなった。雑木は心持丸木材で、樹種にはスダジイやツブラジイ、サカキなどがみられた。木屑や残材には、板目や柾目、ミカン割状の材がみられ、樹種はヒノキ、スギ、コナラ属アカガシ亜属、スダジイ、ツブラジイなどであった。雑木と木屑には共通した樹種がみられる。 周辺環境を示すと考えられる雑木には、時期差がありつつもスダジイやサカキなど共通してみられる樹種が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、4年間の研究期間で順を追って以下の5つの作業段階を設定している。 1)平城宮下層遺跡の自然僕の樹種同定とその成果の提示、2)平城宮下層遺跡の木屑の資料化と樹種同定、3)平城宮下層の木製品の全容を示す、4)古墳時代と奈良時代における同地域の木材の比較、5)「杣」成立以前の木材調達に関する考察の5段階である。 初年度である当該年度は、平城第48次調査(1986年度調査)で、平城宮下層遺跡から出土した遺物について、1)雑木を抽出し、2)木材加工の現地性を示す木屑を抽出、図化し、それぞれ樹種同定をおこない、傾向を把握した。作業はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平城宮下層遺跡のSD4992、およびSD11000出土遺物についても、雑木、木屑、残材資料の抽出をおこない、図化し、樹種同定をおこなう予定である。また、周辺環境の復元については、雑木資料だけではなく、大型植物遺体の分析を合わせて行うことで、周辺環境についてより詳細な情報を得たいと考えている。
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