紙の経年劣化による脆弱な状態は掛軸を製作し、使用し、そして修理する中で様々な方向にかかる引張ひずみによって起きる形状変形を誘発する。従って、掛軸を長期保存するためには劣化箇所とその挙動を正確に把握する必要がある。しかし、肉眼観察では本紙の変化が認知されるまで時間がかかり、本紙におけるひずみ分布は繊維の配向や地合の影響により不均一であるため、その挙動を予測することが難しい。本研究では、紙の劣化状態に関しては短波赤外分光分析法、紙の物理的変形に関しては面内の歪み分布に着目して画像相関法を用いることで目に見えにくいレベルで紙における劣化状態を非破壊的に細かく分類し、変化挙動を予測することができた。
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