研究課題/領域番号 |
21K13143
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
永井 義隆 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (40880620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乾性油 / 桐油 / 豚血 / 塗料 / 伝世資料 |
研究実績の概要 |
2021年度では当初予定していたようにモデル試料を作製し、乾燥速度の測定、塗膜硬度の測定およびフーリエ変換赤外分光法 (FT/IR) による分析等を行った。モデル試料としては煮桐油や漆のみの塗膜から、伝世資料で使用が推測される材料を様々な組み合わせかつ等重量比で混合した塗膜まで9種類の塗膜を作成した。乾燥速度は豚血を混合することにより大幅に向上され、いくつかのモデル試料で塗料として利用可能な乾燥速度を有していた。この乾燥速度の向上は、豚血自身の凝固作用もしくは煮桐油の重合を促進させる作用によるものと考えられるが、詳細は不明である。塗膜硬度は硬化初期のモデル試料間においては大きな差異は確認できなかったが、硬化後数か月のモデル試料においては明確な差異が確認された。塗膜硬度に関しては豚血の混合による明確な差異は確認できなかった。FT/IR によるモデル試料の塗膜表面の赤外吸収スペクトルの測定においては、豚血を混合したモデル試料で波数 1750 cm-1 付近の C=O 伸縮振動に帰属されるピークがシャープな形状になっていた。そのため、豚血の混合により煮桐油の重合が促進される可能性が示された。豚血が混合されたモデル試料に関しては、肉眼でも確認できるほど明確に光沢度が増加していたため、追加で色差光沢度測定を行った。その結果、測定値としても光沢度の増加が確認され、豚血の混合は光沢度を増加させることが示された。その他にもクロスセクション分析および熱分解-ガスクロマトグラフィー質量分析法 (Py-GC/MS) による分析なども行っており、実験データの蓄積は順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル試料作製の検討が予定よりも順調に進んだため、その後の分析評価は滞りなく実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りにモデル試料に対して種々の分析評価を行っていく。2022年度は主にクロスセクション分析による断面観察、蛍光X線分析法 (XRF) による構成元素の分析、Py-GC/MS による構成材料の分析の実施およびまとめを行う。また、2021年度の分析結果と併せて学会発表や論文投稿を行う予定である。さらに、モデル試料の分析結果と伝世資料の分析結果を比較することで、モデル試料をより伝世資料へと近づけるための改良を追加で行い、それらの分析結果の蓄積も行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染蔓延によって、予定していた沖縄での資料調査および研究打ち合わせ、海外で行われる学会への参加は中止せざるを得なかった。そのため、旅費等に計上していた使用金額は繰り越しとなった。また、購入を予定していたビッカーズ硬度計よりも実際に購入した荷重針法引っかき硬度試験機のほうが安価であり、その差額が次年度に繰り越しとなった。
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