研究課題/領域番号 |
21K13146
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
石黒 勝己 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 特別研究員 (60766377)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 考古学 / ミューオンラジオグラフィー / 放射線 / 探査 / 中国史 / 西夏王陵 |
研究実績の概要 |
ミューオンラジオグラフィーの精度を高めるために宇宙線の飛跡をノイズの混入少なく効率よく選び出す必要がある。そのための解析プログラムをまず整備した。自動飛跡読み取り機で読み取った飛跡に関してこれをミューオンらしさとノイズ(コンプトン電子)らしさで尤度分布を求め、ノイズとシグナルに効率よく分けれるようにした。また尤度を考慮して延長上の飛跡を積層フィルムから探し出して正しくコネクトできるようにした。これによって宇宙線の運動量が精度良く測れるようになった(ノイズが含まれると飛跡が折れ曲がったような幾何学と勘違いしてしまうため)。 ノイズ少なく飛跡の運動量が測れるようになったことでミューオンラジオグラフィーと同時に宇宙線陽子ラジオグラフィーが同時に行える見込みになったためこの開発を行った。宇宙線陽子が物体とハドロン反応を起こし生成したガンマ線を計測することで3Dイメージングに利用する。地中深くの探査には向かないが陵台内部の、ミューオンでは難しいような小さな空洞を検出できる可能性がある。これは横向き運動量を受けて曲げられる過程を経た後地上に出たガンマ線をとらえて行うため地中の探査が可能な点がミューオンラジオグラフィーと比べたメリットである(検出器を地中に埋めなくてもいい)。このシミュレーションをまず行いπ0を生成する陽子反応のうち36%と少なくない量の陽子を用いて解析が行えることがわかり、統計数をよく稼いで画像鮮明化できることが解った。これをミューオンラジオグラフィーと同時に用いることで両者の比較を行いながら効率よくイメージングが行える見込みである。メリットが多く、検出器の大部分は同じものを用いながら時間分解能を付加できる構造を足せばよい。これは別の目的で実用化したものがあるため簡単に用いれるため実現を期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国でのコロナ感染症対策で行動制限が多い中、画期的な技術開発を行うことが出来たという評価である。検出器を地中に埋めずに分析が行えれば研究対象が幅広い。ミューオンだけだと小さな文化財の研究は難しかったが像、発掘物などの評価も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
陵台の周囲2か所に検出器を設置して内部の大きな空洞及び表面付近の大小の空洞をイメージングする。空洞に限らず木の部分等も検出したい。大きなものはミューオン、小さな部分は宇宙線陽子に頼ることになる。検出器の構造はフィルムと銅板をサンドイッチし、最下流のフィルム3枚は時間的に回転させることで時間分解能を持たせる。 陵台は高さ約20m,直径30m程度の土山のように残っているが、もともとは七階層の塔のように装飾されていたとの指摘がある。宇宙線ラジオグラフィーによる非破壊検査の 技法を用いて未知の地下施設の位置や構造を検出する。さらに陵台内部に存在する空洞や、木材で密度が低くなっている部分を検出することで内部構造を明らかにする。それによってこの王朝における死生観や埋葬文化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国のコロナ感染症のための行動規制のため中国渡航を延期したため
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