研究課題/領域番号 |
21K13149
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
主森 亘 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 支援研究員 (60850097)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鰭脚類 / 化石 / 分類 / 幾何学的形態測定法 / アプリ化 / 形態解析 |
研究実績の概要 |
骨片化石は種の分類同定が困難であるため,博物館では未整理のまま保管されていることが多い.このような化石標本も分類学的な情報が付与されれば,研究や展示に活用できる.本研究では,日本国内で骨片化石が多産する鰭脚類(アザラシやアシカなど)を題材に,分類学的研究が乏しい体骨格を中心に分類基準を確立する.その成果に基づいて統計処理プログラムを組み込んだ分類アプリを開発する.骨の計測値などを入力するだけで分類同定が一目瞭然になる形式を採用し,独自で同定作業が行えるような環境づくりを目指す.これにより,博物館に収蔵されている未整理の骨片化石に分類学的な情報を与え,研究や展示への活用を創出する. 本年度は3Dスキャナによる3次元データ取得とそのデータ処理についての技能取得を行った.また,栃木県立博物館と福島県立博物館での化石標本調査を行い,それぞれの館で収蔵されていた犬歯化石と胸部骨格化石の記載報告をそれぞれの研究報告書にて論文出版を行った.各館には鰭脚類と思われる体骨格化石の標本が複数確認されたため,本研究で開発予定の分類アプリの実施対象として活用が見込める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3Dスキャナの導入が予想よりも手間取ったためデータ取得の面でやや遅れが生じている.一方で,化石標本については栃木県立博物館と福島県立博物館での化石標本調査を行い,一部の標本については記載論文の出版を行えた.福島県立博物館の標本については夏の企画展にて展示が行われ,監修も行った.また,プレスリリースも実施したため新たな話題の提供というかたちでコロナ禍による来館者の減少に対しての改善につながった.これにより,未分類のまま収蔵されている化石標本に分類学的な意味合いを与えることが,博物館の価値の向上と活性化に直結することが改めて明らかとなった.それぞれの館にも鰭脚類と思われる骨片化石が複数存在していることが判明したため,本研究で開発予定の分類アプリの実施対象として活用する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
遅れが生じている3Dスキャナの技能取得を重点的に行う.本年度より所属機関が帯広畜産大学に変更となり,所属研究室ではCTスキャナなどによる3Dデータの取り扱いに秀でているため,より効率的な学習が期待できる.現生鰭脚類の骨格標本に関しても大学に収蔵されている標本の把握を行い,活用に努める.また,7月に国立科学博物館での調査も確定しており,データの収集に力を入れる.スミソニアン博物館での標本調査は新型コロナによる影響を考慮しつつ,秋冬ごろでの調査を予定している.
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