研究課題/領域番号 |
21K13149
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
主森 亘 帯広畜産大学, 畜産学部, 特任研究員 (60850097)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鰭脚類 / 化石 / 分類 / 幾何学的形態測定法 / アプリ化 / 形態解析 |
研究実績の概要 |
本年度も継続して現生鰭脚類の骨格標本の作製を進めることができた。特に、計測対象とする四肢骨に関してもアシカ類とアザラシ類で十分数の確保が行えている。加えて、外群とするイタチ類に関しても、ツシマテンの標本入手ルートを確保できた。これにより、オス6個体、メス7個体の骨格標本の作製が可能となった。鰭脚類の姉妹群であるイタチ上科の形態データを解析に導入することで、鰭脚類という単系統群で保持されている形態形質についても議論が期待できる。 計測に関しては、先行研究で示されている計測部位に加えて新たな計測領域を追加して前後肢の骨格についてデータ収集を行った。アザラシ類の大腿骨は分類に有用ではないことが既に示されているが、新たに分かったこととして、距骨に関しても分類に困難が生じることが判明した。具体的には、絶滅鰭脚類のデスマトフォカ科に属するアロデスムス類と一部を除く派生的なセイウチ類では距骨の形態的概形が極めてよく似ることが判明し、両種の判別が距骨形態からは困難であった。また、原始的なセイウチ類とアシカ類の一部でも距骨形態が類似する。踵骨でも同様な特徴があったことから、鰭脚類においては、足根骨は系統分類を反映するというよりかは、生態を反映し、特に運動機能に寄ることが示唆された。これは、先行研究で示唆されているセイウチ類が進化の過程で遊泳を含む運動機能の変遷とも整合的である。二次的水棲適応においては、体骨格に収斂的形質が見受けられることも広く知られているが、鰭脚類の足根骨でも類似する現象が生じていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた国外博物館での調査の予定が無くなった。再調整を試みたが、先方との予定が合わず、前年度に調査を行うことができなかった。また、3Dスキャナによるデータ収集が想定よりもかなりの遅れが生じており、十分なデータを確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製した骨格標本の3Dデータの収集に取り組み、十分なデータの確保に努める。また、外群としてイタチ類のツシマテンの形態データも取得し、鰭脚類と姉妹群であるイタチ上科の形態学的差異についても議論していきたい。骨格部位に関しては、新たに得られた足根骨の知見から、手根骨の形態評価も興味深いことが判明しているため、手根骨に特に着目して研究を進めていきたい。また、国内調査では得られない南半球の現生種や北米・南米産の化石種についてもスミソニアン自然史博物館にて調査を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で変更が生じ、計画全体に遅れが生じている。特に、国外調査に影響があり、再調整を行ったものの、前年度は先方との都合が合わなかったため、次年度に変更せざる得ない状況になった。最終年度では、夏期ないし秋期に北米のスミソニアン自然史博物館に調査を予定しており、その旅費が主な使用用途になる。
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