研究課題/領域番号 |
21K13172
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金子 祥之 東北学院大学, 文学部, 講師 (10758197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 極小集落 / レジリエンス / 歴史民俗学 / 集落祭祀 / 集落共同 / 環境史 / 災害 / 資源利用 |
研究実績の概要 |
本研究は、何ゆえに極小集落が存続し続けることができたのか/できているのかを、民俗学的なアプローチにより明らかにすることを目的としている。 この目的を明らかにするため、今年度は、東北地方を中心とした3地域(福島県川内村・福島県檜枝岐村・千葉県栄町)での調査研究を実施した。ただし、コロナ禍であることから、大きく2つの制約・変更があった。第1に当初計画では東北地方以外との比較も念頭に置いていたが、遠方への出張が難しい状況が続いており、福島県内の調査を重点的に実施することとなった。第2に、フィールドワークを中心とした質的な調査研究となる計画であった。しかし、高齢者への聞き取り調査を実施することは困難であったことから、地域に残された資料を使った分析を中心として実施した。 今年度は歴史資料による調査へと変更せざるをえなかったことから、研究課題の遂行に資するつぎの調査を実施した。すなわち、小さな集落の共同がどのように行なわれてきたのかを、歴史的に分析することとした。今年度は、とくに集落祭祀、自然資源利用の2つのテーマを選び、近代~現代にかけての集落共同の変化についての分析を行なった。 集落祭祀に関しては、いずれも集落内に複数の祭祀対象を有する集落であり、これらの多くについて途切れることなく祭祀が続けられてきたことが明らかになった。このような集落祭祀は、災害下ではレジリエンスを発揮するための基盤となっていた。ただ、東日本大震災や近年の過疎・高齢化といった生活条件の変化によって、そうした機能が弱められつつ現状も浮き彫りになった。とはいえ集落祭祀は、完全になくなってはおらず、現状に適した形に変化しながら継承が模索されている。 自然資源利用に関しては、森林が生活保障の役割を果たしてきたことを示した。だが、震災による放射能汚染によって、そうした機能が失われつつあることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍での調査研究となり、研究方法や対象について大幅な見直しを迫られてしまった。医療資源の乏しい小さな集落に出かけ、高齢者に対してインタビュー調査を行なうのは、困難な現状であったためである。 しかし、そうしたなかにおいても、実現可能な方向性を探り出し、研究課題遂行にあたって必要な研究を実施することができた。研究対象を近県に限定し、調査方法についてはインタビュー調査から地域に残された資料へと変更することで対応した。それにより、集落内の共同がどのように行なわれてきたのか、歴史的に把握することができた。 こうしたことから、当初想定した通りではないものの、研究の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と考えている。もちろん、今年度実施した歴史的な分析も研究課題の解明に役立つものである。ただ、本来目指していた聞き取り調査によってこそ、より的確な課題の遂行が可能になるため、状況を見極めつつ次年度の研究へとつなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り、コロナ禍であることから、今年度については研究対象・方法の見直しを行なった。研究対象については、近県に限定し、方法についてはインタビュー調査から資料調査へと変更することとなった。 次年度以降に関しても、どのような社会条件のもとで調査研究を実施することとなるのか、見通しが立たない現状になる。ただ、引き続きインタビュー調査が困難な状況であれば、今年度の対応方法をベースに継続した調査を実施する。反対に、状況が改善し、インタビュー調査が可能な状況であれば、まずは近県に限定したかたちで調査を実施してゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であることから、現地でのフィールド調査が実施できない状況におかれた。こうしたことから、旅費の執行ができずに、残額が生じることとなった。旅費にあてる予定であった分の多くを、資料調査に必要な物品の購入にあてる必要が生じた。 次年度の使用計画については、フィールド調査が再開できる状況になれば、当初予定通りの執行が可能になるものと考えている。またそれが難しい場合は、本年度のような対応をとる見込みであり、適正に執行できるものと考えている。
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