研究課題/領域番号 |
21K13176
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研究機関 | 大阪観光大学 |
研究代表者 |
王 静 大阪観光大学, 観光学部, 准教授 (30758529)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蔵茶 / 四川省雅安 / 茶馬古道 / 民族文化回廊 |
研究実績の概要 |
本研究は、チベット族にたいする民族政策を、蔵茶という具体的な文化の相に焦点をあてて分析するものである。研究助成期間中には、現地調査による蔵茶についての資料収集およびその分析を通して、「茶」を介した中国の少数民族政策の実態を明らかにした上で、民族政策によって少数民族(チベット族)の側に新たな文化の創造が生じていること、そして漢民族側にも従来とは異なる文化状況が生み出されていることを検証することを目指している。 2021年度は、まず蔵茶の先行研究に関する主要文献〔楊紹淮(2006)『川藏茶馬古道』金城出版社、李紅兵(2007)『四川南路辺茶』中国方正出版社、馬存兆編著(2007)『茶馬古道上滚逝的鈴声』雲南大学出版社、趙国棟(2018)『西藏茶文化』西藏人民出版社、李旭(2012)『茶馬古道―横断山脈、喜馬拉雅文化帯民族走廊研究』中国社会科学出版社、李旭(2020)『茶馬古道―従横断山脈到青藏高原』青海人民出版社〕に依拠しながら、1)蔵茶の歴史、2)蔵茶の生産地域、3)蔵茶の消費や飲用の様式、4)雲南や四川からチベットまでの蔵茶貿易の道(茶馬古道)の歴史、5)馬による搬送や人力搬送(背夫)にかかわる民族交流の記録などを中心に整理した。 このように先行研究の検討については一定の進捗があったものの、その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により中国現地におけるフィールドワークが実施できず、本研究が目指す実態的な資料に基づいた分析は現時点ではまったくできていない状態にある。2022年度においては、現地調査への可能性を探りながら、調査の代替案として蔵茶に関する最新の研究情報や企業動向をインターネット等の活用によって収集するとともに、中国の民族政策、とくに文化を介した政策について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究を遂行するための前提的、かつ決定的な条件は、中国現地における一次資料を中心とする文献調査およびインタビュー調査の実施である。2021年度は当初8月から9月にかけて現地調査を行い、蔵茶の生産企業や、中国蔵茶博物館、雅安博物館等での文献資料の収集、蔵茶の栽培・加工・流通販売業者らへのインタビューなどを行う予定であった。 しかし新型コロナウイルス感染症の一層の蔓延に伴い、日本および中国における出入国管理の厳格化や、中国国内における隔離措置や移動制限などによって、中国での現地調査を断念せざるを得なかった。年度当初は、代替案として12月から1月初旬にかけての現地調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期に及んだことでそれも実施できなかった。そのため、2021年度は研究成果を研究論文として取りまとめることができず、研究の進捗は大きく遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、現在未整理のままで、中国四川省の蔵茶企業や蔵茶の流通にかかわっている(いた)関係者などの周辺に散在している一次資料の収集がベースにある。そのため、今後(2022年度、2023年度)も新型コロナウイルス感染症の影響で中国における現地調査が実施できない場合、以下のように計画を変更する。まず、1)インターネットを活用して、中国の蔵茶や民族政策の研究者にオンライン形式のインタビューを行う。同時に、2)中国にいる研究協力者に依頼し、一部分の資料をデジタル・データの形で収集する。そして、3)入手できた資料をもとに考察を行う。これらの作業と並行して、現地調査が可能になった場合の準備も進めておき、そのおりには現地で集中的にフィールドワークを実施し、当初の研究目的の完遂をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に予定していた中国の現地調査が、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う日本および中国における出入国管理の厳格化や、中国国内における隔離措置や移動制限などによって、実施できなかった。その支出予定だった海外旅費などを次年度の現地調査用に使用する。
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