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2022 年度 実施状況報告書

蔵茶によるチベット民族政策と中国茶文化の再帰的変容に関する実態調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K13176
研究機関大阪観光大学

研究代表者

王 静  大阪観光大学, 観光学部, 准教授 (30758529)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード蔵茶 / チベット / 民族政策
研究実績の概要

2022年度においても、新型コロナウイルス感染症の影響により、本研究を進めていく上で決定的に重要となる中国での一次資料収集及び聞き取り調査の実施が、前年度に続きまったくできなかった。本研究は、「蔵茶」というかつて漢民族側でチベット族用に生産・製造していた茶を具体的な対象に、特に文化の政治利用や文化交渉の過程に注目することを通して、少数民族に対する中国の文化政策を捉え直すことを目指している。2022年度は予定していた蔵茶の実態調査ができなかったため、中国の民族政策、とくにチベット族に対する文化政策に関する既存研究の現状整理を行なった。
中国の民族政策に関しては、国家が「中華民族の多元的一体化」に向けて、周縁・辺境の少数民族を軍事的・政治的・経済的な手段で統合を図る、「同化」と「支配」という一方向的な議論が主流となっている。また蔵茶を取り上げる先行研究も漢民族地域からチベットに茶が伝播していく歴史、茶がチベット文化を構成している側面(日常生活、民間文学、物語、チベット仏教の実践活動など)に焦点を当てているのがほとんどである。つまり一方向ではなく、双方向(または立体的)的な視点から、チベット文化化した蔵茶が漢民族や中華民族にどのような反作用をもたらしているのかについての考察が見つからなかった。2022年に蔵茶を含む「中国の伝統的な製茶技術とその関連習俗」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも例になるように、蔵茶を介した漢民族とチベット族の文化の具体的な交渉過程の分析から、新たな文化の創造や共生など、より立体的な検討ができると思われる。
しかし現時点では充分な資料を基にした検討ができていない。助成期間の3年目となる2023年度は、ようやく新型コロナによる世界的な緊急事態の終了を迎え、今後研究期間の延長申請を考えながら、夏季休暇、春季休暇を利用して中国での現地調査を予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究を進める条件であり、同時に本研究の独自性の意味を生み出していくためにも、散在状態にある蔵茶の一次資料を入手整理することが必要である。そのためには中国現地における調査が必要不可欠であるが、2021年度に続き新型コロナが終息せず、予定していた夏季授業休業期間中の調査は、中国への渡航が実現できなかったため中止せざるをえなかった。そのため一次資料の収集や関係者への聞き取り調査から把握できるであろう蔵茶の実態をつかむことができなった。またインターネットの活用も試みていたが、中国国内の新型コロナの感染爆発や聞き取り相手のネットワーク利用の不自由などの問題によってうまく実行できなかった。そのため、2022年度も研究論文の形で研究成果を出すことができず、進捗が大幅に遅れていると判断している。

今後の研究の推進方策

本研究の助成期間は2021~2023年度であったが、当初計画最終年度の2023年度に、1)2年間連続でできなかった中国での実地調査を、夏季及び春季の授業休業期間を利用して集中的に行い、資料収集を実施する。収集した資料について随時整理分析を行ないながら研究論文の形で発表する。2)補助事業期間延長承認の申請を行ない、当初予定していた2021年度、2022年度の中国現地調査の計画を2023年度、2024年度に移行したい。

次年度使用額が生じた理由

本研究は中国現地における資料収集などを通した蔵茶の実態把握がベースにある。そのため申請していた助成の大部分が中国現地での調査費用である。2022年度も2021年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響により、中国での調査を実施できず、調査費用としての支出がなかった。2023年度にはようやく新型コロナウイルス感染症の世界的な緊急事態が終了し、中国現地の調査先との調整を通して、現地調査が実施できる計画が立てられるようになった。2年間遅れた分をなるべく取り戻すためにもより長い期間の調査を実現したい。また当初の研究課題を完成するため、2023年度末に補助事業期間延長の申請を予定しており、認められれば助成金を延長期間中にも使用したい。

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公開日: 2023-12-25  

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