研究課題/領域番号 |
21K13176
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
王 静 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30758529)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 雅安藏茶 / 辺銷茶 / 蔵茶漢飲 / 蔵茶文化 / 茶馬古道 / 歴史遺産資源 |
研究実績の概要 |
2023年度には9月及び3月に中国四川省における蔵茶についての実地調査を2回実施した。本研究は蔵茶が政治利用されることで生じる変容、またそれが政治や社会、経済に対してどのように作用しているのかを捉えることを目的にしている。 実地調査は主に以下の四つの点を中心に行った。1)雅安市と周辺地域にある蔵茶の生産企業を訪問し、それらの企業に併設する博物館や展示館の史資料を集めるとともに、経営者らから蔵茶の生産状況、特にチベット族向けに生産する従来の「辺銷茶」や、新商品づくりなど新たな市場開発に乗り出した経緯や戦略についての情報を収集した。2)雅安市の地方政府、茶業界組織の関係者に聞き取りを行い、「雅安蔵茶」というブランド構築の現状や、「蔵茶」を地域文化化すると同時に中華茶文化に一体化させる取り組みについて把握した。3)蔵茶を対象とする学術研究活動に参加し、研究者との交流を通して、茶馬古道を歴史遺産資源として開発する観光学的観点、「蔵茶文化」に対する歴史学・地理学的な観点からの最新の研究成果を入手できた。4)市民(漢民族側)の蔵茶消費活動の観察調査によって、蔵茶を飲料として利用している場合は、チベット式の入れ方・飲み方がほとんど見られず、新しいスタイルのティ-ドリンクや、飲料以外の場合は健康商品的に利用されていることがあきらかになった。 これら実地調査で得られた資料や情報は、蔵茶に対する従来の捉え方、すなわち蔵茶を国家の直接管理下に置き、それを通して少数民族を管理・統治するという理解の再検討へとつながるものである。また蔵茶が中華茶文化全体に影響を与えていることを検証していく材料にもなるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初の計画通り中国での資料収集を実施することができた。ただし、当初予定していた本研究の3年の計画からみたとき、進捗がやや遅れた状態にあると考える。これは2021年度、2022年度がコロナ禍の影響で現地での調査ができなかったためである。今年度の調査を通して遅れをある程度取り戻すことができた。研究期間の延長が認められているので、2024年度の調査によって当初計画通りに研究の遂行が可能になると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度も引き続き中国での現地調査と資料収集を2回程度実施する予定である。また、そこで得られた資料をもとに、2024年度後半には、本研究を研究論文として取りまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度及び2022年度において中国での現地調査が実施できなかったため、予算がおおよそ当初計画の二年分未執行の状態にある。2024年度への研究期間の延長が認められたため、未執行分を主として海外調査の経費に充て、当初の計画通り、予算執行を行う予定である。
|