研究課題/領域番号 |
21K13177
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
片 雪蘭 奈良大学, 社会学部, 講師 (50848372)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 難民 / チベット / インド / モビリティ / レミッタンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、インド・ダラムサラとフランス・パリのチベット人コミュニティにおける「レミッタンス・フロー」に焦点を当て、海外のチベット人によるレミッタンスがインドのチベット難民社会に与える影響を経済的・文化的・物質的な側面から分析することである。2022年度には主に国際学会の参加や現地調査を行った。昨年度は、新型コロナウイルスの影響により海外渡航ができなかったため、これまでできなかった現地調査(2022年9月:インドのデリーとダラムサラでの現地調査、2023年3月:フランスのパリでの現地調査)を2回実施した。 具体的には、まずインドにおいてチベット難民数の減少にもかかわらずレストランやカフェ産業が開発されつつあるダラムサラとデリーのチベット難民居住区を観察し、それらの資金の出所や状況について聞き取り調査を行った。フランスでは、インドから移住したチベット難民が現在どのような法的地位を持っており、どのような生活をしているのかを聞いた。また、ヨーロッパ最大のチベット人コニュニティであるパリが、インドのチベット人社会とどのようなネットワークを築いているのか現地の関係者に聞き取り調査を行った。 それらの成果は、『International Journal of South Asian Studies』(13号)への論文掲載(査読あり)のほか、2022年7月に16th Seminar of International Association for Tibetan Studies、2022年11月に韓国比較民俗学会国際学術大会にて口頭発表をして公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の2021年度には、新型コロナウイルスの影響により文献調査に集中していたが、2022年度には2回の現地調査を実施し、現地でのデータを収集することができた。インドにおけるチベット難民の人口数がますます減少している一方で、インドのダラムサラやデリーのチベット難民居住区はインフラや産業が発達しつつある。実際にインドのチベット難民居住区の変化を観察し、人々に聞き取り調査をすることによってより状況を具体的に知ることができた。また、フランスでの現地調査も実施することによって、チベット難民の多くがフランスに移住する理由やインドとの関係についても確認することができた。 それらの成果は、論文「Waiting for Papers: Paperwork, Migration, and the Uncertainty of Tibetan Refugees in India」『International Journal of South Asian Studies』(13号)のほか、2022年7月に16th Seminar of International Association for Tibetan Studies、2022年11月に韓国比較民俗学会国際学術大会にて口頭発表をして公表されている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にも、続けてインドへの現地調査を予定している。まだ現地でのデータが足りないことから、インドのダラムサラとデリーを中心に現地調査を行う。海外のチベット人のレミッタンスによって、インドにおけるチベット難民居住区における産業、特にカフェ産業が発展している状況に注目し、その結果新たに生まれてきた文化的実践を主に観察する。
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