本研究は、スコットランドにおいてコミュニティに対して付与されている土地先買権に関して、法社会学的な手法による実態調査を踏まえつつ、その法的正当性を担保する法理論についての分析を行い、日本における今後の土地関連法政策への示唆を得ることを目標とするものである。 本研究は、主に5つの段階で構成されている。初年度である2021年度は、判例および文献に基づく基礎研究を中心に、コミュニティに対して土地先買権を付与することの、法的正当性を担保する法理論について分析作業を行った。2021年度に行った研究は、この中の第一段階と第二段階に該当する。 2022年度および2023年度は新型コロナウィルスによる渡航制限が緩和されたこともあり、スコットランドにおける現地調査を実施することができた。これは第三段階と第四段階に該当する。スコットランドのルイス・ハリス島でPairc Trust(Pairc Estateにおけるコミュニティ・オーナーシップの権利主体)に対して行ったインタビュー調査では、主体を構成するメンバーの多くが無報酬であり、なり手が見つからないケースや、風力発電施設の誘致等の開発行為に対するコミュニティにおける意見対立等、運営面での困難が多く聞かれた。 最終年度である2023年度には、第一から第四段階において収集した文献やインタビュー等の質的データを分析し、日本の土地関連法政策に資する知見について、比較法的視点から考察した。
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