(1)第33次地方制度調査会の審議動向の分析・検討:昨年度より継続している地方制度調査会の審議動向の分析・検討を引き続き行った。2023年度第1回地方分権研究会(自治労連・地方自治問題研究機構主催:10月29日開催)において、第33次地方制度調査会第20回専門小委員会において提出された答申素案(10月23日)を批判的に検討する報告を行った。これを踏まえて、この間の成果を拙稿「この間の地方制度調査会の議論についての問題点」にまとめた。 (2)領域的自治の実践の分析・検討:地域づくり研究会(東海自治体問題研究所)において、東海地方の市町村における自治基本条例を軸とした住民自治によるまちづくりを調査・研究し、その成果を拙稿「自治基本条例の可能性」にまとめた。 (3)機能的自治と領域的自治の接合に関する分析・検討:いわゆる「マイナ保険証」導入に伴う現行保険証廃止問題をめぐり、国保保険者である地方公共団体とりわけ市町村の議会からこれに反対する意見書が多く提出されていることに着目し、国保保険者においては機能的自治と領域的自治とが接合し、その結果、市町村の「保険者としての自治」が活性化したという仮説を、拙稿「マイナ保険証と『保険者の自治』」において示した。 (4)機能的自治の民主的正統化論の検討:機能的自治と民主政原理との関係についての理論的分析を進めるために、公的医療保険の保険者の連合と給付提供者の連合との間で行われる「共同自治」と呼ばれる重層的な自治構造を検討した。その結果、「共同自治」の民主的正統化の構造は、典型的な機能的自治モデルのそれからも逸脱することが明らかになり、行政の多元化・分節化・独立化といった伝統的な特徴をもつドイツ行政においては民主的正統化論もさらに多様化する可能性を、拙稿「ドイツ疾病保険の多層的自治構造における『共同自治』の民主的正統化に関する一考察」において示した。
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