研究課題/領域番号 |
21K13183
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
津田 智成 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00779598)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公務員の個人責任 / 国家賠償法 / 不法行為法 / 住民訴訟 / フランス法 |
研究実績の概要 |
本研究は、公務員個人が法的に金銭的責任を負わされるのはいかなる場合であり、また、それはいかなる考慮に基づくものなのか、という根本的な疑問を端緒として、国家賠償法第1条第2項に基づく求償訴訟や地方自治法第242条の2第1項第4号に基づく住民訴訟等において公務員個人に負わされうる種々の金銭的責任について、それぞれの解釈論上あるいは制度上の共通点や差異等を明確化することにより、その相互関係を明らかにした上で、各責任間の調和を図ることを可能ならしめる法的規律のあり方を解明しようとするものである。 1年目の本年度は、主に国内法に目を向け、求償による内部的責任・4号訴訟による首長等の責任・公務員の対外的賠償責任という三つの責任に関する判例や先行研究を分析し、とりわけ各責任の成立要件の認定において考慮されている事項や、その制度趣旨等を整理することを通して、各責任間の相互関係を明らかにすることを試みた。 具体的には、上記各責任が相互に関連づけられうる場面、例えば、①公務員の対外的賠償責任に関する裁判例の中には、求償規定を根拠に故意又は重過失がある場合にのみ当該責任が認められると判断したものがあること(東京地判昭和46年10月11日下民集22巻9・10号994頁)、②同種の裁判例の中には、求償制度の存在を、公務員の対外的賠償責任を否定する根拠の一つとして援用しているものがあること(東京地判昭和52年3月28日判時875号69頁)、③4号訴訟による首長等による責任が問題となる場合には、求償制度との関係において軽過失でも責任を負わせることが妥当か否かが、しばしば議論の対象となっており、実際、平成29年の地方自治法改正により責任の減免の仕組みが導入された背景には、こうした議論の影響が見られること(「住民訴訟に関する検討会報告書」)などに着目し、各責任間の相互関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記【研究実績の概要】において示したように、本年度は、当初の計画どおり、求償による内部的責任・4号訴訟による首長等の責任・公務員の対外的賠償責任という三つの責任間の相互関係に関する研究を進めることができた。また、当初計画にはなかったものの、出版社からの依頼により、求償による内部的責任に関する判例評釈を執筆する機会を得ることができた(来年度公表予定)。したがって、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の計画どおり、フランス法における公務員個人の金銭的責任に関する判例及び学説を分析することにより、当該責任の法的規律のあり方を明らかにすることを試みる。具体的には、フランスの判例の中には、我が国で提起されている訴訟と類似の事案が問題となっているものもあるため、特にそうした判例を中心に検討を進めることにより、そこで考慮されている事項等を整理し、比較法研究のための材料とすることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張が困難な状況にあり、当初予定していた国内出張のための旅費が余ったため、次年度使用額が生じることとなった。当該残額については、次年度の旅費や日仏国家賠償法関連の文献の購入費に充てる予定である。
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