研究実績の概要 |
本研究は、公務員個人が法的に金銭的責任を負わされるのはいかなる場合であり、また、それはいかなる考慮に基づくものなのか、という根本的な疑問を端緒として、国家賠償法第1条第2項に基づく求償訴訟や地方自治法第242条の2第1項第4号に基づく住民訴訟等において公務員個人に負わされうる種々の金銭的責任について、それぞれの解釈論上あるいは制度上の共通点や差異等を明確化することにより、その相互関係を明らかにした上で、各責任間の調和を図ることを可能ならしめる法的規律のあり方を解明しようとするものである。 2年目の本年度は、フランス法における公務員個人の金銭的責任に関する判例及び学説を網羅的に渉猟し、特に、わが国で提起されている訴訟と一定の共通性が見られる、当該責任の成否が問題となった訴訟を中心に、当該責任の法的規律のあり方を明らかにすることを試みた。具体的には、例えば、小学校の教員が児童らに殴打等の体罰を行った事件に係る訴訟(C.E. 12 decembre 2008, n°296982, Rec. 454)や、市長がある不動産計画が住民の生活環境を害するおそれがあることなどを理由に建築許可の拒否等のさまざまな行政手段を用いて当該計画の実現を長年にわたって強固に妨害し続けた事件に係る訴訟(Civ. 1re 25 janvier 2017, n°15-10.852, D.A. 2017, alertes n°45.)を検討し、上記責任の成否の判断基準や、そこで考慮されている事項等を分析・整理した。
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