研究課題/領域番号 |
21K13190
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
村上 玲 淑徳大学, コミュニティ政策学部, 助教 (80774215)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 表現の自由 / 欧州人権裁判所 / 欧州人権条約 |
研究実績の概要 |
本研究は公共秩序及び人間の尊厳という法益が、表現の自由との関係においてどのように考慮されるのかを究明することを目的としている。人及び情報通信のグローバル化によって、表現の送り手・受け手の双方が地理的にも文化的にも多様化している現代社会において、多文化社会・多元的価値社会における表現の自由の在り方が問われるようになっていることを背景に、多民族で構成され、EUの加盟国でもあるイギリスの憎悪扇動表現規制の立法過程における議論と判例を素材とし、イギリス議会及びイギリス国内裁判所が、ヨーロッパの影響を受けながら、表現規制の保護法益として公共秩序と人間の尊厳をどのように定義・考慮し、問題となった表現に関する法益侵害の認定における審査基準を構築してきたかを探求しようとするものである。 研究初年度である本年はヨーロッパの表現規制における法益としての公共秩序と人間の尊厳を明らかにするため、欧州人権裁判所判例における表現の自由関連事件における公共秩序と人間の尊厳について明らかにするよう努めた。 欧州人権条約は表現規制の正当化事由として国の安全、領土保全、公共の安全、無秩序・犯罪の防止、健康・道徳の保護、他者の名誉・権利の保護を列挙しており、公共秩序及び人間の尊厳はこれらにかかる事由として位置づけることができる。特に人間の尊厳にかかる判例として、近年問題となっているヘイトスピーチに関する事件では表現の自由に対する締約国による干渉を適切とみなす傾向があるようにうかがわれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公共秩序を保護法益とする、表現の自由に関する欧州人権裁判所判例についての分析が十分に行えていないため。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れを取り戻すため、2022年度は研究計画において予定しているイギリスの国内判例の分析とともに欧州人権裁判所判例の分析も継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的半導体不足により、研究計画書にも掲載したPCの納入が次年度4月以降になると業者より指摘があった。年度を跨ぐ支出は経理手続上問題があるため、2021年度のPC購入を翌年度へと持越ししたため次年度使用額が生じることになった。 次年度使用額は当初の予定通りPC購入にあて、本年度配当研究費については予定通り、文献等の蒐集費用に充てる予定である。
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