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2021 年度 実施状況報告書

精神障害と量刑:責任能力論を超えて

研究課題

研究課題/領域番号 21K13207
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

竹川 俊也  慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 講師 (40812194)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード量刑 / 責任能力 / 精神障害 / クレプトマニア
研究実績の概要

刑法39条は,行為者の責任能力が問題となる場合について,心神喪失者の不可罰と心神耗弱者の刑の減軽を定める。判例・通説によれば,精神の障害が責任無能力をもたらせば心神喪失者の行為として不可罰となり,責任能力の著しい減少をもたらせば心神耗弱者の行為として刑が必要的に減軽される。しかし,精神の障害が責任能力に著しくは影響しないものの,犯行に一定の影響を及ぼした場合に,このことが量刑判断においてどのように考慮されるべきかという問題は,わが国においてほとんど論じられてこなかった。
他方で,わが国の量刑実務において被告人の精神障害は,問題となる犯罪の重大性により,異なった評価・重みづけがなされている。例えば,死刑が争われるような類型では,被告人の反社会性人格障害という精神障害は刑を重くする(あるいは軽くしない)事情として理解されるのに対し,食料品店での万引きといった比較的軽微な類型では,被告人の摂食障害という精神障害は刑を軽くする(あるいは執行猶予を選択する)事情として理解されうる。
こうした,量刑判断における精神障害評価の多面性は,責任能力評価においては責任の増減という単一のファクターのみが考慮されるのに対し,量刑判断においては責任(応報,retribution)のみならず,抑止(deterrence)や隔離(incapacitation),社会復帰(rehabilitation)といった各種の刑罰目的が複合的に考慮されることに起因する。
本研究は,アメリカ刑法における精神障害と量刑の関係性をめぐる議論について,その歴史的背景や理論的根拠を対象とした研究を行うことにより,触法精神障害者の量刑の判断枠組みを明らかにすることを目指すものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,現在の量刑実務において問題となっている事象を正確に把握するために,万引き再犯のケース(摂食障害やクレプトマニアによる万引き再犯)について,責任能力や量刑が争われた事案を中心に分析を加えた。この成果は,後掲研究業績「『万引き』と責任非難・量刑」の形で論文化した。

今後の研究の推進方策

翌年度は,重大犯罪に焦点を絞った上で,精神障害と量刑の問題を引き続き検討する予定である。その際には,わが国における裁判例の総合分析と平行して,諸外国における量刑判断と精神障害をめぐる議論を参照する予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度も,新型コロナウイルス感染症の拡大傾向が継続したため,当初予定していた海外調査を断念せざるを得なくなったためである。幸い,国内外の状況は好転しているため,次年度は計画通り調査を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 「万引き」と責任非難・量刑2022

    • 著者名/発表者名
      竹川俊也
    • 雑誌名

      高橋則夫先生古稀祝賀論文集

      巻: 下巻 ページ: 57-96

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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