研究課題/領域番号 |
21K13207
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹川 俊也 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 講師 (40812194)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 量刑 / 精神障害 / 責任能力 |
研究実績の概要 |
現在わが国において、触法精神障害者の量刑がどのように評価され、その背景にある刑罰思想がいかなるものなのかが問題となっている。しかし、ドイツの議論を参考に展開されてきたこれまでの量刑理論は、抽象的な議論にとどまっており、裁判実務において、これらを直接的な指針として用いることは困難である。これまでの量刑理論は、「責任とは何か」という形而上学的な命題から演繹的に導出された基準を提示することに終始し、実務における理論の適用可能性を度外視する傾向があったためである。 本研究は、触法精神障害者の犯罪に関する裁判例の量刑理由の分析を出発点とし、総論的な理論枠組みを構築するための準備作業を行うことを目的としている。2021年度は、万引き再犯の事案(摂食障害や窃盗症の被告人による万引き再犯)について、責任能力や量刑が争われた事案を中心に分析を加えたが、2022年度は、重大犯罪における量刑の位置づけを明らかにすることを目標に据え、裁判例分析を中心とした検討を進めた。この成果は、北大刑事法研究会(2022 年 10 月 8 日、北海道大学札幌キャンパス)および現行刑事法研究会(2022 年 11 月 26 日、早稲田大学早稲田キャンパス)において報告し、前者では量刑理論を専門とする研究者らから、また後者では刑事裁判官らからフィードバックを得ることができた。これらを本研究に反映した上で、2024年度のなるべく早い時期に論文として公表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
裁判例分析を中心とした分析を、概ね当初の想定どおり進めることができたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、2022年度までに得られた裁判例分析の成果を理論的にどう接合するかが中心課題である。代表者は、2023年度から米国での在外研究を予定しており、米国量刑理論・処遇論を参照しつつ集中的に研究を進めることが可能であると思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度以前の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、各種学会・研究打合せがオンラインに変更された影響のため。2023年度は感染状況も落ち着きつつあるので、当初予定していた調査研究を振替えるなどして支出を計画している。
|