研究課題/領域番号 |
21K13213
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
嶋津 元 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (70823392)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ayant cause / representation / 詐害行為取消権 / 時効援用権 |
研究実績の概要 |
本研究においては、フランス法におけるayant cause概念の意義を明らかにすべく、同概念と密接な関係に立つと考えられるところのrepresentation概念の意義について検討を行なっている。 本年度は、前年度に引き続いて、詐害行為取消請求を行った一般債権者が他の債権者をrepresenterしているという19世紀フランス法における有力な理解についてその理論構成を検討し、行使されている詐害行為取消権の共通性が重要な意義を果たしているのではないかという点を明らかにした。このことは、フランス法において、ある権利義務Aの当事者が他の権利義務Bの当事者をrepresenterするという場合について、権利義務Aと権利義務Bとの間にある一種の共通性が大きな意味を持っていることを示唆している。というのも、フランス法においては、権利義務Aが存在するということは誰に対しても通用するのであり、権利義務Bの当事者にとっても権利義務Aの存在は、存在として認識されるべきものである。つまり、権利義務Aが存在することそれ自体が権利義務Bの存在と連動しているという場合においては、権利義務Aと権利義務Bとは共通の要素を持っているのでなければなければならず、その共通性ゆえに、権利義務Aの当事者と権利義務Bの当事者とは同一の立場に置かれているとも言いうるわけである。権利義務Aの当事者が権利義務Bの当事者をrepresenterするということの意義はまさにこの点にあると考えられ、今後はこの仮説を実証的に検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から継続して取り組んでいたところの、詐害行為取消請求におけるrepresentation概念の意義について、所属する大学の紀要に論文(「詐害行為取消判決はいかにして総債権者の利益となるかーフランス法における《representation》概念の意義に照らして」岡山大学法學会雑誌72巻 3・4号277頁)を公表することができた。 また、representation概念ないしayant cause概念の基底をなす思考枠組みとしてのopposabilite概念、つまり、ある権利義務が存在するということは誰に対してもそのように認識されるという理解が極めて重要な役割を果たしているのではないかという仮説を抱くに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
既に研究実績の概要においても言及したが、ある権利義務Aの当事者が他の権利義務Bの当事者をrepresenterするとされる場合においては、権利義務Aと権利義務Bとの間に何らかの法的な共通性が見出される必要があるのではないかと考えられるに至った。今後は、この「何らかの法的な共通性」がフランス法内部で把握されているのかということを、具体的に検証していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度における未使用額2,119円となったことが直接の原因である。もっとも、前年度の支払請求額は600,000円であり、未使用額が占める割合は約0.35%である。これは支払請求額を超過しないように慎重に予算を執行したことの表れである。 このようにして生じた次年度使用額は、本研究の主たる使途である資料収集(書籍購入や論文取り寄せ)に充てる予定である。
|