研究課題/領域番号 |
21K13213
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
嶋津 元 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (70823392)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ayant cause / 承継人 / opposabilite / 対抗 / 所有権 / 帰属 / 時効 |
研究実績の概要 |
令和5年度においては、①博士論文及びその後の研究成果を書籍として出版する目処が立った。つまり、完成原稿を作成して、その出版について、公益財団法人全国銀行学術研究振興財団からの助成を受けることができた。これに加え、②今後の研究の展開の一つとして、所有権の帰属概念に関する論文(「所有権の帰属概念に関する序論的考察ー所有権の絶対性はいかにして現実のものとなるか?」岡山大学法學会雑誌73巻4号295-339頁)を執筆・公表することができた。 上記の①の研究成果は、時効が完成した権利義務が、その当事者以外の第三者にとってどのように認識されるのかという権利義務の存在論の問題について、時効援用権者の範囲画定基準という具体的問題に即しつつも、方法論も含めて総合的に検討したものであり、令和6年7月ごろの出版を予定している。そして、①の検討において残されていた具体的問題の一つを取り上げ、所有権という権利の存在概念という問題に即して更なる検討を進めたのが、上記②の研究成果である。 これらの研究を遂行することを通して、権利義務の存在概念を支える根本的な発想を探究することの重要性を明らかにすることができたと思われる。また、その研究の方向性の一つとして、近代所有権論の議論、特にカントにおける所有論ないし権利論(特に、『人倫の形而上学』の法論における議論)を民法学において参照することの学説史的・理論的意義についても、ある程度明確にすることができたと思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目論見としては、博士論文を補充・展開させることによって、その研究成果を書籍として公表することが出来れば、それなりの成果となりうるのではないかと考えていた。しかし、その作業を行う中で、今後の研究、特に、博士論文に続く大きなテーマにつながりうる論文執筆に取り組むことができたのは、当初の計画以上の成果であった。
|
今後の研究の推進方策 |
前述の紀要にて公表した論文において、所有権の帰属概念について、その絶対性を所与の前提とせず、根本的に発想を転換することの必要性をある程度明らかにした。今後は、当該問題が具体的問題として立ち現れてくると思われるところの、取得時効の構造論や、占有と所有との関係について検討を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画通りに、書籍や論文の調達を主とした予算執行を行ったが、予算額を超えないように注意した結果、若干の未使用額が生じることとなった。専門書1冊を調達するにも足りない額であるが、令和6年度における資料収集のための費用として有効に活用する予定である。
|