• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

信用毀損による不法行為責任の類型論的分析

研究課題

研究課題/領域番号 21K13215
研究機関九州大学

研究代表者

高岡 大輔  九州大学, 法学研究院, 准教授 (60850857)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード信用毀損 / 名誉毀損 / 権利侵害警告 / 真実性の抗弁 / 相当性の抗弁 / 信用毀損罪 / 営業損害 / 逸失利益
研究実績の概要

信用毀損およびこれと密接に関係している営業侵害について、ドイツ法及び日本法の判例・学説を検討した。その結果のうち、営業侵害については、日本私法学会における個別報告「営業の間接的侵害による責任」を行った。その要旨は学会誌「私法」に掲載される予定である。
信用毀損については、特に最大の類型である名誉毀損型の信用毀損について集中的に検討し、その成果である「信用毀損による不法行為と名誉毀損法理」を法政研究89巻1号に投稿し、掲載された。この論文においては、学説において信用毀損には名誉毀損とは異なる固有の法理を適用すべきことが主張されているにもかかわらず、裁判例が信用毀損に名誉毀損法理を適用しているという問題状況において、信用毀損固有の法理があるとすればその適用対象をどのように考えるべきかを論じた。そして、ドイツ法の議論の展開を参照しつつ、信用と名誉とを「低下させられた社会的評価の対象」という観点から区別することが困難であること、むしろ財産的損害の賠償と人格的利益の侵害に対する慰謝料とを区別し、前者こそが名誉毀損法理に馴染まないものであることを指摘した。そして、名誉毀損と信用毀損が競合する裁判例を、古典的意味での信用の侵害、刑事判例において信用毀損罪における信用の一内容と認められた商品・サービスの評価に対する侵害、それ以外の人格的侵害に伴う営業上の損失に分けて詳細に検討した。その上で、裁判例が財産的損害にも名誉毀損法理を適用すること、とりわけ加害表現の真実性が真偽不明の場合にも、無形損害の算定の考慮要素という形で財産的損害を考慮することを批判し、財産的損害は信用毀損固有の法理の適用対象とすべきで、刑法や不競法における信用毀損と同様に、加害表現の反真実性が立証されることを要求すべきであると論じた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

信用に対する侵害を類型的に検討するに当たっては、営業侵害との関係性を踏まえつつ、その実際上最大の類型である名誉毀損型の信用毀損が最も重要であるところ、この類型についてはドイツ法と比較しつつ裁判例を分析し、考察を加えて、その成果を論文として公開することができた。ただし、謝罪広告・差止請求についてはまだ検討を加えることができていない。
また、名誉毀損型の信用毀損のうち、公的機関への情報提供によって生じる信用損害については、上記論文では検討対象から除外したところであり、特に例の多い不当告訴事例や不当執行・仮執行事例、不正競争における混同惹起行為等における信用損害について、保護法益としての信用の分析という観点から、なお検討を進める必要がある。
それ以外には、風評型の信用毀損、すなわち第三者が環境汚染や違法行為など被害者の評価を実際に低下させる事実を生じさせているが、報道やインターネット上の表現等において、その実際に生じた事実に関連するが真実の範囲を超えて過大に被害者の評価が低下させられたような事案に関して、当初の研究計画から扱う予定となっていたが、まだ検討することができていない。

今後の研究の推進方策

信用毀損事例においては謝罪広告や差止請求が損害賠償請求に劣らぬ重要性を有しているが、これらについてまだ検討を加えることができていないことから、今後、ドイツ法等の外国法とも比較しつつ、判例・学説の検討を進めたい。
また、名誉毀損型の信用毀損のうち、公的機関への情報提供によって生じる信用損害については、上記論文では検討対象から除外したところであり、特に例の多い不当告訴事例や不当執行・仮執行事例、不正競争における混同惹起行為等における信用損害について、保護法益としての信用の分析という観点から、なお検討を進めたい。
風評型の信用毀損、すなわち第三者が環境汚染や違法行為など被害者の評価を実際に低下させる事実を生じさせているが、報道やインターネット上の表現等において、その実際に生じた事実に関連するが真実の範囲を超えて過大に被害者の評価が低下させられたような事案に関して、ある程度判例の収集等を行ったが、さらに検討を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

物品について、洋書の出版が遅れて購入予定の書籍の注文をキャンセルせざるを得ないことがあった。
旅費について、コロナの影響で予定されていた研究会が開催されなかったり、開催されてもオンラインでの開催となったりして、予定した旅費を支出しない場合があった。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 営業の間接的侵害による責任2023

    • 著者名/発表者名
      高岡 大輔
    • 雑誌名

      私法

      巻: 84 ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 信用毀損による不法行為と名誉毀損法理2022

    • 著者名/発表者名
      高岡 大輔
    • 雑誌名

      法政研究

      巻: 89 ページ: 31~79

    • DOI

      10.15017/4796014

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 営業の間接的侵害による責任2022

    • 著者名/発表者名
      高岡大輔
    • 学会等名
      日本私法学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi