研究課題/領域番号 |
21K13231
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
石神 圭子 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20640866)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 参加デモクラシー / コミュニティ・オーガナイジング / 社会運動 |
研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度実施できなかったアメリカでの調査を実施した。当初、オハイオ州クリーブランドにあるIAF支部でのインタビュー、参与観察を予定していたが、どのようなツテを辿っても当該支部との連絡が取れず、以下のように訪問先を変更し、且つアプローチを微修正した。行先:ニューメキシコ州アルバカーキのIAF支部、アルバカーキインターフェイス、及びオハイオ州クリーブランドのコミュニティネットワーク、Neighbor Up/ アプローチの微修正:アルバカーキではインターフェイスの元オーガナイザーと教会聖職者にインタビューを行った。Neighbor Upは、本研究が着目するIAFとは直接的に関係のないネットワークであるが、雇用されているオーガナイザーは「コミュニティ・オーガナイザー」を自称しており、IAFのオーガナイザー訓練を受講している関係者も存在したため、Neighbor Upのオーガナイザーやフィランソロピストにインタビューを実施し、IAFとの比較を行った。その結果、IAFの組織構造、オーガナイザーの特質をより明確に把握することができた。 上記の調査結果を、並行して進めていたデモクラシー理論研究と接合し、その一部を編著『コミュニティ・オーガナイジング』(有斐閣、2023年6月出版予定)所収論文に反映した。また、本研究が前提としているアメリカにおける自治や市民社会論の知見を基に、『図録政治学』(弘文堂、2023年)の「地方自治」「政治意識」の執筆を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度には、本研究が核とするアメリカのコミュニティ組織におけるインタビュー調査を実施することができたものの、Covidによる約4年間の渡航制限中に関係性が希薄となったオーガナイザーもおり、受け入れ先の決定が難航した。また、予期しない円安によって渡航先も限定的とならざるを得なかった。他方、ニューメキシコ州ではコミュニティ・オーガナイジング研究者であるニューメキシコ大学のRichard Wood氏と意見交換を行い、実践観察の不足を補うだけの有益な議論を行うことができた。とはいえ、IAFという組織のクローズドな性質を踏まえて当初予定していたオハイオでの聞き取り調査ができなかったことは、研究自体の進度を遅らせている。また、アルバカーキインターフェイスでの調査でもオーガナイザーの家族の事情で大幅な予定変更があった(インターフェイスのリード・オーガナイザーへのインタビュー、及び事務所訪問はできなかった)。2023年度にもこうした相手側の事情に対して、柔軟な対応とアプローチの微修正を迫られる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度終了までに、オハイオのIAF支部の活動を現地調査することを目的としているが、IAFの組織構造は各州の裁量が高いため、オハイオ支部の稼働が(オーガナイザーの多忙さゆえに)調査に適していなければ、訪問することはできない。こうした困難(支部の運営の仕方、オーガナイザーの配置や繁忙期によるミスマッチ)は、これまでのインタビュー調査や関係者との議論において徐々に判明してきたものである。また、IAFのような「インフォーマルな」組織は広報活動もほとんど行っていないため、外部からのアクセスによる情報収集はそもそも限定的である。しかし、こうしたインフォーマルな組織こそ、政治学が看過してきた分析対象であって、本研究の意義は上記の困難によってむしろ高まっている。幸い、IAFは体系的なオーガナイザー教育を行っているため、オハイオのようなラストベルトの組織化をどのように考えるのかという問題については、(オハイオ訪問がかなわなくとも)他州の支部のオーガナイザーからも聞き取り可能と考えられる。 したがって、2023年度についてもインタビューと参与観察を最大限に行い、欠けている情報やデータを収集することにより研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
続く円安傾向、アメリカ現地調査のタイミング(子供の夏季休暇、冬期休暇、及び教育活動を除く)によって変動する渡航費の余剰分である。これについては、次年度にすべてアメリカ渡航費、及び宿泊費に消化する。
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