研究課題/領域番号 |
21K13245
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉本 郁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (30899282)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 対外援助 / ロビイング / 民主化 |
研究実績の概要 |
本研究は、、国内のガヴァナンスがどのように経済援助・直接投資といったグローバルな資金の移動に影響し、また、逆に後者が国家能力の向上・民主化・ポピュリズムの台頭といった形で先進国・途上国双方のガヴァナンスにどう影響を与えているのかを解明することを目的としている。当該年度は、ガヴァナンス指標の数値化に着手するとともに、「民主化促進援助」に着目し、こうした援助形態が他の形態と併せてどのように受入国のガヴァナンスに影響するのかという点、および、直接投資と相互に作用しながら20世紀終わりより発展してきた生産過程のグローバル化(グローバル・バリュー・チェーンの構築)が、その一つの中心であるアメリカ国内の海外ロビーによる活動にどのような影響を与え、その民主主義的な政治過程にどのような変容を生じさせうるかという点について、理論化・実証分析を試みてきた。後者については、国内の学会での報告などを経て、有益なコメント・指摘を得、さらに発展させた形で海外ジャーナルへの投稿を準備中である。特に、グローバル化の諸側面が進む中で、海外と国内の利益集団がどのように対抗/協調関係を築くかなど、今後さらに掘り下げていくべき問いも見つかり、そちらについても取り組んでいる。また、前者についても、当該年度中に海外学会での報告が決まり、そこで得られたコメントなどをもとに発展させていく予定である。特に、対テロ戦争の文脈から、アメリカの軍事援助などとのかかわりも重要であることが分かり、政軍関係の視点も取り込んで分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
途上国での民主化促進援助・米国での海外ロビーの活動など、具体的な事象に落とし込み、国内外での学会における報告なども行えていることから、概ね順調であると考えられる。他方でガヴァナンスの指標化については、当初の予定ほど進んでいないが、以上の実証分析の知見を活かしての発展が見込まれることから、このような区分を選択している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国家によるガヴァナンスの様々なガヴァナンスの指標化に取り組むとともに、海外直接投資や生産過程のグローバル化が国内の利益集団の活動にどのような影響を与え、それが海外の利益集団の活動とどのような関係にあるか、分析を進める。また、アメリカによる民主化促進援助について、そもそもなぜ2000年代以降そのような形態での援助が拡大したのか、対テロ戦争とのかかわりも絡めながら理論化・実証をさらに深める。さらに、COVID-19の状況をみつつ、海外での調査・学会報告なども行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行状況により学会報告などでの旅費支出が必要なくなったことなどから、次年度使用額が生じているが、次年度は国内外ともに人の移動が解禁される方向にあることを踏まえ、実際の状況を見つつ、海外での調査・報告に使っていきたい。
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