研究課題/領域番号 |
21K13256
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高山 直樹 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10843790)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 情報 / 景気変動 |
研究実績の概要 |
本研究は、経済の状態について認識の一致が成立しない現実的な情報構造の下で、各経済主体が内生的な情報をも観測する一般的なマクロ経済における均衡の性質を明らかにし、その応用として、実際的な動学的マクロ経済モデルによりコンフィデンスへのショックがある経済の定量的な分析を実現しようとするものである。これにより、情報構造と均衡の関係をつまびらかにすることで不完備情報下のマクロ経済学における理論的な発展に貢献するとともに、情報摩擦のある経済をデータで裏付けられた現代的なマクロ経済モデルで描写するためのより一般的な手法を開発し、これまで標準的なマクロ経済モデルでは取り込まれてこなかった新しいタイプのショックが持つ含意を定量的に明らかにすることを目指す。 2023年度は、これまでに研究代表者らが開発した不完備情報下におけるマクロ経済モデルの求解手法について、異質的な経済主体を伴うニューケインジアンモデルはじめ応用可能性をより広く検討した。併せて、先進国経済の長期停滞やデフレ・ゼロ金利制約のコストなどコンフィデンスと潜在的に関連しうるトピックについて知見を蓄えた。先進国経済の長期停滞については、コンフィデンスによってもたらされた可能性を直接棄却するものではないが、技術的な停滞によって相当程度説明されることが明らかになった。関連して、この技術的な停滞は2010年代の日本のインフレ率の上昇の背後にあることも示唆された。また、デフレ・ゼロ金利制約のコストについては、それが顕著であるというには実証的な根拠が不足していることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らが開発した不完備情報下におけるマクロ経済モデルの求解手法についての論文が経済学5大誌から条件付き採択になるなど具体的な成果が出始めた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究代表者らが開発した実際的な動学的マクロ経済モデルに基づいて、コンフィデンスが景気変動の主要な要因であることをより定量的に明確に示したい。併せて、各経済主体が集計生産量のような内生的な情報を観測するケースについて解析解を与える可能性を引き続き模索するが、潜在的にコンフィデンスに関連しうるトピックについて理解を進めることで手法の応用可能性の幅を広げることも追究したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた英文校正費用を支出せずに済んだため。海外研究者の招へいに活用したい。
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