研究課題/領域番号 |
21K13260
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高梨 誠之 京都大学, 経済学研究科, 講師 (70826312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会的選好 / 意思決定理論 / ゲーム理論 |
研究実績の概要 |
本年度は、自分の結果だけでなく、他の全てのエージェントの結果にも依存する社会的選好の領域を、決定論的結果ベクトルから結果ベクトル上のくじに拡張する研究を行った。具体的には、EIAモデルを拡張した効用関数のクラスを公理的に特徴付ける研究を行った。また、その効用関数のクラスの公理的な特徴を明らかにすることで、EIAモデルが意思決定者の各エージェントに対する事前公正と事後公正に関する態度が同じであることを暗黙のうちに仮定していることを指摘した。加えて、我々は各エージェントに対する不均質な態度を許容し、我々のモデルとEIAモデルとの違いを特徴付ける公理を提案した。我々のモデルはHEIAモデルと呼べるもので、このモデルにおいては効用の損失分を事前と事後それぞれで計算し、それをそれぞれの他のエージェント毎に結合し、そのうえでエージェントに対する総和を計算することで、得られるものとなっている。この効用関数は直観的にも極めて理解しやすいものとなっており、また、実験的にも応用しやすく、組織におけるリスクシェアリング問題に適用されるであろう。これらの研究成果は現在、ほぼ論文としてまとめることが出来、近々経済理論に関するトップレベルの国際学術雑誌に投稿する予定となっている。
また、これらの効用関数のゲーム的な環境への影響を調べるべく、特に動学ゲームの交渉問題に着目し、他の研究者とも連携しつつ、研究を進めつつある。これらの内容はまだ論文としてはまとまっていないものの、十分見込みのあるものとなっており、今後研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学会での発表が難しくなるなど、Covid-19の影響はあったものの、研究内容としては、大きな進展を得ることが出来、未だ国際学術雑誌への受諾を得られていないが、1年目であることを鑑みれば、十分に順調に進んでいるといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにまとまっている意思決定論的な部分の内容は、概ね論文にまとめることが出来ているので、この論文を可能な限り優れた国際学術雑誌に載せることが、まず重要となってくる。そのうえで、現在進めている動学ゲームの応用を進めて、論文へとまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で、国際学会での発表や情報収集が滞ったため、次年度使用額が生じた。来年度は、収まることを願いつつ、必要に応じて国内での旅費等に充てる予定である。
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