研究課題/領域番号 |
21K13266
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
江原 慶 大分大学, 経済学部, 准教授 (20782022)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルクス / ケインズ / MMT / 貨幣 / 金融 |
研究実績の概要 |
まず本研究計画の目的を改めて確認しておきたい。近年,財政政策の目標を完全雇用とし,それに必要な資金を中央銀行と中央政府とが一体となって弾力的に供給しつつ,マイルドなインフレを達成しようとする「現代貨幣理論 (Modern Monetary Theory: MMT)」 が注目を浴びている。MMTの背景に,ケインズ的な表券貨幣論があることはよく知られるが,ケインズ派と対立する貨幣論をもつとされる,マルクス経済学者の間でもMMTへの関心が高まっている。本研究では,マルクスの商品貨幣論の射程を,ケインズ派の表券貨幣論のそれと比較し,それをもとにMMTの政策目標を達成できるか,検討することを目的とする。そのために,1. マルクス派とケインズ派の貨幣理論の異同を明らかにした上で,2. これまであまり着目されてこなかった,マルクス派とケインズ派の金融理論の異同を,貨幣論に関連させて明らかにする。それらの比較に基づき,3. マルクス派MMTの可能性を検討し,MMTの一般化を図る。 以上の研究目的・方法にしたがい,2021年度は以下のように研究を進めた。まず第1の貨幣論に関しては,マルクス派の貨幣論を批判的に検討し,そこにケインズ派貨幣論に特徴的な「自己利子率」的な概念を抽象化して入れ込むことで,商品貨幣論の刷新を図る大胆な構想を示した。それによって,現代の信用貨幣を理論的に説明することを試みた。第2の金融論については,マルクス派の金融論研究史をまとめ,銀行を中心とした金融市場の構造を明らかにする論文集を編み,英文で発表した。そのほか,金融論研究史と並行して進められた商業資本論研究についても英文論文を発表した。第3のMMTについては,その前提の一つとなる労働論に関連する古典的な独語論文を初めて邦訳し発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に提出した研究成果は,英文学術書(査読あり)1件,英文学術誌論文(査読あり,共著)1件,和文学術誌論文(査読なし,招待あり)1件,独和翻訳1件,学会発表8件(うち国際学会2件)である。しかし2021年度に計画していたロンドンでの国際学会発表はコロナ禍により実現できなかった。現地参加は国際学術ネットワーク形成において不可欠であり,2022年度に改めて試みたい。また,もっぱら研究の進展が見られたのは,研究目的に掲げた3つの目的のうち,第1の「マルクス派とケインズ派の貨幣理論の異同」および第2の「マルクス派とケインズ派の金融理論の異同」に貢献する部分である。第3のMMTに関連する研究はあまり進んでいないので,今後はこの点にも注力していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書にしたがって研究を進める。2021年度に予定していたロンドンでの国際学会発表は2022年度に実施する。2022年度も、2021年度と同様に、コンスタントな成果発表を続けていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していた旅費が支出できなかった。2022年度に学会等の出張を実施する。
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