研究課題/領域番号 |
21K13267
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
仲北浦 淳基 大正大学, 地域創生学部, 専任講師 (70823095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 経済学説史 / 経済思想史 / マクロ経済学 / ケンブリッジ学派 / D.H. ロバートソン / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケンブリッジ学派のデニス・ロバートソンの‘後期’の経済理論(1930~50年代)、とくに経済成長論と厚生論(再分配論)を分析することで彼の経済理論を体系化すること、および、それらの理論が当時の経済学者からどのような評価を受けたかを明らかにすることである。これらの目的のため、2023年度には以下の研究を行った。
①ロバートソンのマクロ経済理論:ロバートソンが経済成長、経済変動、格差といったマクロ的な経済現象についてどのように捉えていたかについて、マーシャルの「安楽基準」と「生活基準」という概念から明らかにした。ロバートソンは、経済成長についてそのメリットを認めつつも、経済変動というデメリットの面にも注目している。また、格差是正という課題については、生活水準の全体的な向上という形ではなく、先進国における生活水準の引き下げを伴いことを指摘していたことが分かった。 ②ロバートソンのケインズ理解:ロバートソンがケインズ経済学をどのように理解、評価し、自らの理論とどのように対比させようとしたのかについて、ケインズ死後のケインジアンとのと論争の対立点を明らかにした。ケインジアン(De Jong)との論争において、とくにケインズの供給曲線に関して、ロバートソンはとくに(1)ケインズが期待の売上金額と実際の売上金額の区別を曖昧にしている点と(2)ケインズの貯蓄が事後的概念であり、そのため均衡理論が成立しないという点を主張し、De Jongもそれに合意するに至った。 ③ロバートソンにおけるマーシャル的伝統:ロバートソンがマーシャル経済学をいかに継承、発展させようとしたのかについて研究した。これまでその特異性が強調されてきたロバートソンの諸概念(懐妊期間、ラッキング、ラグ、生産者協同組合、共同管理)が、実はマーシャル的伝統を継承し、各問題に活用しようとした概念であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画当初想定していたよりも手稿の解読が困難であり、かつ、翻刻サービスの消化頻度が想定よりも著しく遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度同様、研究計画にそって、とくにロバートソンの分配論に焦点を当てて研究を進めていく。2024年度はとくにこれまでに研究してしてきたことを学会発表や論文の形にまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
翻刻サービスの遅延と学会報告等の遅れにより、想定から支出機会に時間差が生じたため。
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